ReverseClassRoomWithNote
13/17 連帯債務の冒頭条文と通説による解説

【テロップ】
※各テロップ文字をクリックすると該当の場所がピンポイントで閲覧できます。



【ノート】
連帯債務に関する冒頭条文である民法432条(履行の請求)を読んでみましょう。■ 冒頭条文は,いつでも,重要な地位を占めていますので,連帯債務の場合ばかりでなく,新しい分野を学習する際には,必ず,冒頭条文をよく読んで,理解するようにしましょう。 ■民法432条(履行の請求)は,以下のように規定しています。 数人が連帯債務を負担するときは,債権者は,その連帯債務者の一人に対し,又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し,全部又は一部の履行を請求することができる。 ■民法432条の意味を具体的に理解するために,最初に挙げた,共通のセツレイで説明することにします。 ■Y1▲,Y2 ▲,Y3▲ が,債権者▲Xからそれぞれ,300万円,200万円,100万円を借りることにして,債権者Xに対して,連帯して債務を負うとの約束をしたとしましょう。 ■債権者▲Xは,例えば,Y1▲一人に対して,全額600万円の請求をすることもできるし, ■Y1▲,Y2 ▲,Y3▲ に対して,それぞれ,600万円を支払えと請求することもできるし,もちろん, ■Y1▲ に300万円,▲Y2 ▲に200万円,▲Y3▲ に100万円の返済を請求することができるということになります。■ このような連帯債務の性質について,通説を代表するワガツマ栄『債権総論』岩波書店(1954年)401頁は,以下のように記述しています。■ 連帯債務とは,数人の債務者が,同一の給付について,各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担し,    ■しかもそのうちの一人の給付があれば他の債務者も債務を免れる多数当事者の債務である。 ■一見したところでは,もっともらしい説明であり,多くのヒトが納得しています。だから,このワガツマ説が,現在でも,通説となっているのです。■ しかし,この通説を論理的に厳密に分析してみると,直ちに,矛盾していることがわかります。 ■なぜなら,「各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担している」のであれば,債権者は,600万円の3倍の1,800万円の弁済を受けることができることになるはずです。 ■さらに,「各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担している」のであれば,連帯債務者の一人が600万円の給付をしても,残りの連帯債務者は,依然として,それぞれ,600万円の債務を負担し続けることになるはずです。 ■連帯債務者の一人が連帯債務の全額を弁済すれば,すべての債務者の連帯債務が消滅するというのは,一応,正しい結論であり,民法432条の結論でもあるのですが,通説の出発点である「各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担している」とは,完全に矛盾しているのです。 ■つまり,連帯債務については,論理の破綻した通説が,100年以上にわたって民法学を支配してきたことになります。 ■このような悲劇が生じた理由は何なのでしょうか? ■つぎに,その点について,検討することにしましょう。