4 立法理由

現行民法574条は,以下に記載する旧民法財産取得編第75条を修正したものである(広中俊雄編『民法修正案(前三編)の理由書』有斐閣(1987)556頁)。

旧民法

財産取得編 第75条 (1) 代金弁済ノ場所ヲ合意セサルトキハ其弁済ハ有体動産ニ付テハ引渡ヲ為ス場所不動産、債権、争ニ係ル権利又ハ会社ニ於ケル権利ニ付テハ証書ノ交付ヲ為ス場所ニ於テ之ヲ為ス
(2) 引渡ノ前又ハ後ニ代金ノ弁済ヲ要求スルコトヲ得ヘキトキハ其弁済ハ買主ノ住所ニ於テ之ヲ為ス

(1)旧民法財産取得編75条1項に関しては,売買代金が物の引渡と同時履行となる場合において,旧民法のように動産,不動産,権利の売買を区別せず,物の引渡の場所を代金の弁済の場所とした。

(2)旧民法財産取得編75条2項に関しては,同時履行とならない場合においては,金銭債務について,すでに,民法484条において,旧民法の債務者の住所主義を変更し,債権者の住所主義を採用したことから,民法484条と重複しないよう,これを削除した。