2004年度 親族法 試験問題

T 婚姻の成立及び不成立,有効ならびに無効および取消,離婚との関係について,以下の事例を読んで,問に答えなさい。答えるに際しては,根拠条文を示して答えること。

事例1:A女とB男は婚姻届出をし,その間に1男1女をもうけた。しかし,AとBは不仲となり,B男はA女との協議離婚届を提出して受理されたため,C女と再婚し,その間に1男が出生している。A女は,離婚届がB男の欺同行為によるものであったため離婚意思と届出の委託を撤回したにもかかわらず提出されたとして,協議離婚無効確認訴訟を提起したところ,離婚無効確認訴訟に勝訴し判決が確定した。Aの戸籍回復により,AB間の前婚が復活してBC間の後婚は重婚となった(最三判昭57・9・28民集36巻8号1642頁(家族法判例百選〔第6版〕(2002)第9事件) 参照)。

【問1】 重婚となったBC間の後婚は,成立しているか,それとも不成立か(10点)

【問2】 重婚となったBC間の後婚は,取り消すことができるか。その場合,BC間の後婚は取消判決によってさかのぼって無効となるのか,それとも,取消判決によって,そのときから婚姻が解消されるのか(10点)

【問3】 前の問題を考慮した場合,重婚となったBC間の後婚は,有効と考えるべきか,それとも無効と考えるべきか(10点)。

【問4】 重婚となったBC間の後婚に関して,前配偶者であるA女が,BC間の婚姻の取消を求めて,婚姻取消の訴えを提起したとする。もしも,B男とC女が離婚した場合,A女が提起した重婚取消の訴訟は,どのような結果となるか。A女は勝訴判決を得ることができるか,それとも,訴えは,A女の訴えは,訴えの利益がないとして,却下されるのか,理由がないとして,棄却されるのだろうか(10点)。

【問5】 民法731条以下の婚姻の取消事由は,その位置が,第1節 婚姻の成立,第1款 婚姻の要件とされているため,婚姻の成立障害要件と考えることも可能であるが,これらの障害事由があっても,婚姻取消判決がなされるまでは,婚姻は継続するのであるから,婚姻の成立要件ではなく,有効な婚姻の解消自由だと考えることも可能である。自らの見解を,理由とともに簡潔に述べなさい(20点)。

U 婚姻の成立と無効に関して,以下の事例を読んで,問に答えなさい。答えるに際しては,根拠条文を示して答えること。

事例2:D女とE男は婚姻届出を出して受理されたが,二人の間では,職場が離れていることもあり,週末だけ同居し,それ以外は,別居する約束を交わしていた。4年後に,D女は,別居に不都合を感じるようになり,E男に同居をするよう申し入れたが,E男はこれに応じようとしない。

【問6】 事例2の場合に,婚姻は有効に成立しているか。その理由とともに,簡潔に述べなさい(20点)。

事例3:F女とG男は,婚姻をすること,および,婚姻届を出すことに同意したが,どちらかが氏を変更する点では,合意に達せず,その点は,同居しながら,じっくり考えることにした。しかし,F女が妊娠したので,子の身分のことも考えて,婚姻届を出すことにした。しかし,婚姻後の氏をどちらの氏にするかで,未だに合意が成立していなかったため,婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏・新しい本籍」という欄について,夫の氏にするか,妻の氏にするかをチェックせずに届けを出したところ,婚姻届は受理されず,民法742条の規定により,婚姻は無効となってしまった。そこで,FとGとは,婚姻の「効果」に過ぎない夫婦同氏を婚姻届の受理要件としている戸籍法(戸籍法74条1号,戸籍法施行規則59条,附録12号様式)は,憲法24条に違反して無効であり,氏の問題を婚姻の成立とは切り離し,氏の欄についてチェックのない婚姻届であってもこれを受理すべきだとして,市を相手取って訴えを提起した。

【問7】 事例3の場合に,婚姻届を受理せず,婚姻を無効とすることは,憲法24条に違反しているか。その理由とともに,簡潔に述べなさい(20点)。