2000年7月18日
名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂
ネコは,ネズミを捕るものと思われてきた。しかし,最近では,上手にネズミを捕れないネコが増加しているらしい。ネコもネズミの捕り方を教わってはじめてネズミが捕れるようになるとのことである。人が「学ぶ」ということの本質を理解する上でも,以下のネコの学習に関する記述は示唆に富む(沼田朗『猫をよろこばせる本』PHP文庫(1996年)74〜75頁)。
ネコには狩りの本能が生まれつきある。だが,実際の狩りのテクニックはたいへん高度なもので,かなりの学習と訓練が必要なのである。
狩りのテクニックを教えるのは母親の役目だが,最近の飼いネコ事情では,母から子へと狩りの方法を伝えるのはむずかしい。結果,狩りの下手なネコが増加して当たり前なのだ。母ネコから狩りを学ばなかったネコは,母になっても狩りのやり方を伝えられないわけなのだ。
野生だったころの母ネコは,子が生まれて4〜5週も過ぎると,最初はすでに死んだ獲物をすみかに運ぶ。そして2〜3か月後には生きた獲物を運ぶようになり,子ネコは獲物の殺し方と食べ方を学ぶのだ。
同じころ,子ネコは母ネコに連れられて実地訓練にも出かける。そこで子ネコは母親の狩りを見学し,獲物の種類に応じた狩りのコツを学ぶわけである。
この見学が重要で,母ネコの狩りを直接見られない場合,子ネコは狩りのテクニックを身に付けられないことが多い。
狩を教えるネコ科の動物 |
上記の記述では,獲物の捕り方を学ぶ方法が3段階に分けて記述されている。それを分析してみよう。
これを法学教育に置き換えてみると以下のようになろうか。
法科大学院でも以上のプロセスを経ることによって,実務家が考えるのと同じレベルでものごとを考えることのできる人材を養成することができると思われる。