03ObjectOfObligation
13/20 民法現代語化(2004年)における目的と目的物の区別と修正(1/4)
【テロップ】
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【ノート】
民法の条文に債権の「目的」と「目的物」の混同があったことは,従来から指摘されており,2004年の民法の現代語化の際に,その混同が修正されました。その箇所を見つけて,どのように修正されたのかを追体験してみましょう。 ■この作業を通じて,債権の「目的」と「目的物」との違いを明確に区別することができるようになります。■ ■専門家とは,「素人が同じようなものだと思っていることについて,明確な基準のもとに,はっきりと区別して,取り扱いを変える能力をもつヒト」のことですから,この作業を通じて,皆さんは,法律専門家に一歩近づくことになります。この作業がレポート課題として取り上げられているのも,以上の理由に基づいています。 民法402条の旧条文(金銭債権)から始めましょう。 民法402条の旧条文ですが(これは,「旧民法」ではありませんので注意しましょう。),この旧条文は,以下のように規定していました。 民法402条(旧条文)第1項■「債権の目的物が金銭なるときは債務者は,その選択に従い,各種の通貨をもって弁済をなすことをう。ただし,特種の通貨の給付をもって債権の目的となしたるときはこの限りにあらず。」 ■ここでは,金銭が債権の「目的物」とされ,特殊の通貨の給付が債権の「目的」とされており,誤りはありません。 したがって,現行条文は, もんごんの訂正はせず, 以下のように,現代語化のみを行っています。 民法402条第1項「債権の目的物が金銭であるときは,債務者は,その選択に従い,各種の通貨で弁済をすることができる。ただし,特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは,この限りでない。 」 ■次に,民法402条(旧条文)第2項を見てみましょう。 民法(旧条文)402条第2項■「債権ノ目的たる特種ノ通貨が弁済期において,強制通用の効力を失いたるときは,債務者はたの通貨をもって弁済をなすことを要す。」 ■ 第2項は,特殊の通貨を債権の「目的」としていますので,誤りです。 ■では,現代語化に際して,この誤りはどのように改められたのでしょうか? ■現行条文を参照する前に,まず,自分で考えて見ましょう。 ■よく考えてみると,修正の方法は,二つあることに気がつきます。 ■第1は,債権の「目的」の方をそのままにして,「特定の種類の通貨の給付」と修正するものです。 ■第2は,「特定の種類の通貨」の方を活かして,債権の「目的」を「目的物」へと修正するものです。 ■その上で,現行民法402条第2項を見てみましょう。 民法402条第2項■「債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは,債務者は,たの通貨で弁済をしなければならない。」 ■ここでは,第2の方法が採用されていることがわかります。 ■なぜ,第1の方法が採用されなかったのでしょうか。第1項が,「債権の目的物」から始まっているので,第2項もそれにあわせたと考えることもできますが,第1項のただし書きについては,「債権の目的」について規定しており,次の第3項も,「債権の目的」について規定しているので,むしろ,債権の「目的」に合わせた方が,流れとしては美しいので,決定的な理由とはいえません。 ■ここでは,民法の条文の最初の誤りである民法402条2項の場合には,債権の「目的」という誤りが,債権の「目的物」へと修正されたということを記憶にとどめておきましょう。 ■最後に,民法402条第3項の旧条文について,検討しましょう。 民法402条第3項■「ゼン2項の規定は,外国の通貨の給付をもって債権の目的となしたる場合に,これを準用す。」 ■外国の通貨の給付が債権の「目的」とされているので,第3項には誤りはありません。したがって,現行民法402条3項は,以下のように,現代語化をするにとどめています。 民法402条第3項■「ゼン2項の規定は,外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。」