03ObjectOfObligation
14/20 民法現代語化(2004年)における目的と目的物の区別と修正(2/4)
【テロップ】
※各テロップ文字をクリックすると該当の場所がピンポイントで閲覧できます。
【ノート】
民法402条2項の次に,債権の「目的」と「目的物」との区別について,誤りに陥っていたのは,どの条文でしょうか? ■それは,民法419条【金銭債務の特則】(旧条文)第1項です。旧条文は,以下のように規定していました。 民法419条1項■「 金銭を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,法定利率によりてこれをさだむ。ただし,約定利率が法定利率にこゆるときは,約定利率による。」 ■金銭は,債権の「目的」ではなく,債権の「目的物」ですので,旧条文は誤りです。 ■この場合にも,修正の方法は二つあります。どのような方法があるのか,現行民法を見る前に,まず,自分の頭で考えてみましょう。 ■第1は,「目的」をそのままにして,「金銭」を「金銭の給付」へと修正する方法です。 ■第2は,「金銭」をそのままにして,「目的」を「目的物」へと修正する方法です。 現行民法は,現代語化に際して,さきの民法402条2項の場合とは異なり,以下のように,第1の方法を採用しました。 民法419条第1項■「金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,法定利率によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。」 ■旧条文の「金銭を目的とする債務の不履行」という誤りについて,現行民法419条1項が,「金銭を目的物とする債務の不履行」とはせずに,「金銭の給付を目的とする債務の不履行」へと修正したのはなぜでしょうか? ■典型例としての民法402条を振り返ってみましょう。民法402条1項は,「債権の目的物が金銭であるときは」と規定していました。したがって,民法419条1項の場合にも,「金銭を目的物とする債務の不履行」へと修正しても,なんの問題もなかったのです。 ■もちろん,「金銭を目的物とする債務」とするよりも,「金銭の給付を目的とする債務」とする方が,「債務との接続関係が美しい」という考え方も成り立ちます。 ■しかし,民法419条の見出しが,「金銭債務の特則」とされており,この条文の焦点は,「金銭を目的物とする債務」にあるのですから,現代語化としては,「金銭を目的物とする債務の不履行」と修正した方が素直な修正だったといえるでしょう。 ■それにもかかわらず,現代語化に際して,わざわざ,「給付」という用語を付加して,「金銭の給付を目的とする債務の不履行」へと修正したのは,なぜでしょうか? ■その点については,民法422条の誤りについて検討する際に,再度,考えてみることにしましょう。 ■次に,民法419条の2項は,現代語化に際して,2項と3項とに分離されて規定することになりました。 ■内容の変更はないので,ざっと見ておきましょう。 民法419条(旧条文)第2項■「前項の損害賠償については,債権者は,損害の証明をなすことを要せず,又,債務者は,不可抗力をもって抗弁となすことを得ず。」 現行民法419条2項■「前項の損害賠償については,債権者は,損害の証明をすることを要しない。」 現行民法419条3項■「第1項の損害賠償については,債務者は,不可抗力をもって抗弁とすることができない。」