03ObjectOfObligation
17/20 目的と目的物の区別の行方←民法85条が変わらない理由は何ですか(学生談)?
【テロップ】
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【ノート】
これまで,民法422条において債権の「目的」と「目的物」との区別を貫徹しようとすると,矛盾に陥ることを見てきました。 ■民法422条の場合,「目的」を維持したまま支払を追加すると,条文の趣旨が損なわれてしまいます。 ■反対に,「目的物」へと修正すると,目的物を有体物に限定する民法85条に反するように見えます。 ■私の考えは,以下の通りです。 「民法85条を以下のように改正すべきである。」というものです。 民法 第85条(加賀山・改正案) 第1項■物とは,有体物又は無体物をいう。 第1号■有体物とは,ヒトが管理することができるもののうち,固体,液体,気体をいう。 第2号■無体物とは,ヒトが管理することができるもののうち,有体物でないものをいう。 第2項■所有権の目的物は,有体物に限定される。 このように規定すると,民法の立法者が恐れた「債権の所有権」という概念矛盾は生じなくなります。 ③▲所有権以外の権利の目的物は,有体物だけでなく,無体物とすることができる。 民法の現代語化に際して,立法者は,「給付」や「支払」を挿入したのですが, ■上記のように,民法85条を改正すれば,そのような手段は不要であり,「目的」を「目的物」と変更するだけで済むことが理解できると思います。 ■このような改正を行うと,債権の目的と目的物との区別だけでなく, ■物権における目的と目的物における区別の混乱も解消することができます。 例えば,民法362条は,「シチ権は,財産権を目的物とすることができる」と規定できることになります。 ■その他の立法上の「誤魔化し」も解消されるでしょう。 これまで,矛盾に陥っていた債権売買(債権譲渡)の目的物についても,「債権」であるといってよいことになります。