03ObjectOfObligation
5/20 1.債権・債務の目的
【テロップ】
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【ノート】
債権総論1の講義の最初のテーマは,債務の目的です。 ■民法第三編(債権)第一章(総則)第一節の表題は,「債権の目的」です。 ■債権と債務は当事者のどちらを主体と考えるかの違いであって,内容は同じですので,ここでは,債務の目的という用語を使うことにします。 ■この方が後に述べるように,英文での説明が簡単だからです。 ■さて,債権の目的,すなわち,債務の目的とは何でしょうか? ■「目的」というと,目標と同じような意味にとられる恐れがありますが,ここでの「目的」は,目標と言う意味での目的ではなく,「対象(オブジェ)」という意味での「目的」です。債権の目的は,給付,すなわち,「なになにすること,または,なになにしないこと」です。 ■そして,債権の目的物,すなわち,債務の目的物とは,「なになにすること,なになにしないこと」という給付の,さらに,その目的物のことをいいます。■ 目的と目的物との関係は,英語で表現するともっとわかりやすくなります。 Obligor(債務者)+ ought(…しなければならない)+ to do(債権の目的)+ something(債権の目的物)と考えてみましょう。 このように考えると,債務の目的とは,動詞▲oughtの目的語(to do)であり,債権の目的物は,不定詞to doの目的語であるという関係にあることがわかります。 ところで,目的と目的物との区別については,民法は混乱に陥っています。 2004年の民法の現代語化の際に,もともとあった債務の目的と目的物との区別に関する立法上の過誤が訂正されたのですが,その訂正のうちの一つが,さらに誤りに陥るという失態を重ねているからです。 そこで,この講義では,以下の点について詳しく検討します。 第1に,債務の目的と目的物の区別に関する,民法のもともとの立法の過誤とは何か? 第2に,民法のもともとの過誤は,民法の現代語化において,どのように訂正されたのか? 第3に,民法のもともとの過誤を訂正したはずの現行民法が,さらに誤りに陥っているのはどの条文か? 第4に,現行民法の立法者が,債権の目的と目的物との区別において,誤りに陥った原因は何か? ■債権の目的と目的物の区別は,現行民法の立法者でも,誤りにおちいるほど,難しい問題をかかえていることを知ることは,学生が民法を学習する際に,注意すべきことを自覚できるだけではありません。 ■立法者でも,誤りを犯す人間であることを自覚することができますし,そのことが,どの教科書にも触れられておらず,明治学院大学のこの講義だけが,その誤りについて,詳しく取り上げていることを知ることは,みなさんの学習の励みになると思われます。