03ObjectOfObligation
7/20 物の定義の変遷 →立法理由
【テロップ】
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【ノート】
債権の目的と債権の目的物との違いを知る上で,前提となる知識は,二つあります。 前提知識の第1は,債権とは何かです。しかし,債権とは何か?については,先に説明しましたので,復習しておいてください。 ■前提知識の第2は,モノとは何かです。モノとは,何でしょうか? 現行民法は,第85条において, 「この法律において,モノとは,有体物をいう。」と定義しています。■ 有体物とは,人間の五感で知ることができるものであり,気体,液体,固体の三つに限定されます。■ 有体物以外で重要なものとしては,例えば,電気があります。電気はエネルギーであり,気体でも,液体でも,固体でもないため,有体物ではなく,無体物です。■ 民法が,「モノとは,有体物をいう」と定義したため,刑法では,電気▲窃盗▲を罪とするため,刑法245条において,「この章の罪〔すなわち,窃盗および強盗の罪〕については,電気は,財物とみなす。」と規定しなければなりませんでした。■ 現行民法の起草者たち,すなわち,写真の右から,穂積陳重,梅謙次郎,富井まさあきらの三名は,なぜ,モノを有体物に限定したのでしょうか?■この点については,つぎに,詳しく考察することにしましょう。 ボワソナードが起草し,現行民法の下敷きとなった旧民法(1890年公布)では,実は,モノは,有体物に限定されていませんでした。 旧民法の財産編▲第6条を見てみましょう。 旧民法▲財産編 第6条は,第1項で,「モノにユウタイなるあり,無体なるあり。」と規定していました。 ■そして,有体物を定義して,「有体物とは,ヒトのカンカンにふるるものをいう。すなわち,地所,建物,動物,器具のごとし。」と規定していました。 ■さらに,無体物を定義して,「無体物とは,知能のみをもってエカイするものをいう。」と定義していました。そして,無体物の例示として,以下の3つをあげていました。 第一■物権及び人権〔すなわち債権〕■ 第二■著述者,技術者及び発明者の権利〔すなわち無体財産権〕■ 第三■解散したる会社,又は,清算中なる共通に属する財産及び債務の包括〔すなわち,一般財産〕 ■現在から考えれば,この旧民法財産編▲第6条は,わが国で最も重要な財産ともいえる▲知的財産権を含んだ規定であり,現行民法より,よほど,先進的な条文です。 ■それなのに,なぜ,このような優れた条文が現行民法によって,削除されてしまったのでしょうか? ■このことを知るために,現行民法の立法理由を探索してみましょう。