ここで,債権の目的と債権の目的物との区別を明確にしておくことにしましょう。■
債権の目的というと,先に述べたように,債権の「目標」という意味ではないのか?という誤解が生じてしまいます。このため,最近の教科書の中には,用語法を「債権の目的」から,「債権の内容」へと変更するものがあります。■
しかし,「債権の内容」としたからといって,その意味がわかりやすくなるわけではないし,債権の目的である「債権の内容」と「債権の目的物」との間の用語上の連続性がなくなってしまいます。■
そこで,この講義では,「債権の目的」,すなわち,「債務の目的」を英文を使ってわかりやすく説明してみることにしました。すなわち,債務の目的とは,なになにしなければならないという,「ought」という動詞の▲「目的語」の意味だと理解しようという試みです。
すなわち,Obligor(債務者は)ought(債務を負う)to do(なになにすることを)something(なになにというモノについて)と考えるのです。
具体例で言えば,以下のようになります。Oughtという動詞の「目的語」である to doが「債権の目的」だということがわかると思います。
The Seller(売主は) ought(債務を負う) to deliver(引き渡すことを)the goods(物品について).■
The Buyer(買主は) ought(債務を負う) to pay(支払うこと) the price(代金について).■
以上の作業を通じて,「債務の目的とは,oughtの目的語である!」という言葉のあやが,理解できたでしょうか?