04TarCase
11/35 受領遅滞中の履行不能

【テロップ】
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【ノート】
引き続き,リアクションペーパーで問題となった,民法の一部を改正する法律案で提案されている,受領遅滞中に履行不能となった場合の「みなし」規定を紹介します。 2015年3月31日に国会に提出された民法改正案(民法413条の2)では,その第2項で,受領遅滞後に債務が履行不能になった場合について,「その履行の不能は,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす」との新設規定が提案されています。 (新)民法413条▲第1項■債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは,■その履行の不能は,債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。 (新)民法413条▲第2項■債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは,■その履行の不能は,債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。 ■タール事件の教訓は,受領遅滞の要件である▲債権者が債務の履行を受けることを拒んでいる場合でも,それが,履行期間中に不能となった場合であったり,品質が契約に適合しなかったりした場合など,さまざまな場合があり,受領遅滞がある場合であっても,一律に債権者にキセキ事由があると判断するのは危険であるということでした。 ■それにもかかわらず,今回の民法改正で新設される民法413条の2は,受領遅滞がある場合に,履行不能が生じた場合には,債権者にキセキ事由があるものとみなすとして,断定的な判断を下しています。 ■タール事件の教訓を生かすのであれば,この規定は,「みなす」ではなく,「推定する」とすべきでした。 ■今回の民法改正は,判例で問題となった事実関係の複雑さから,何も学んでいないようです。