04TarCase
18/35 漁網用タール事件(2/5)原審の判断
【テロップ】
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【ノート】
この事件では,訴訟は,最高裁判所まで進み,最高裁判所が原審判決(すなわち,高等裁判所の判決)を破棄し,原審に差し戻したため,第一審の地裁判決,第二審の高裁判決,上告審の最高裁判決,そして,差し戻し後の高裁判決というように四つの判決が出されています。 ■ここでは,最高裁によって破棄されたのですが,わかりやすい,第二審の高裁判決から見ていきます。 二審の札幌高裁は,本件売買契約の目的物は特定し,Y(売主)は,〔民法400条に基づいて〕,「善良なる管理者の注意」をもって,これを保存する義務を負っていたのであるから,その滅失につき注意義務違反の責めを免れず,従って本件売買はYの責めに帰すべき事由により履行不能に帰したものと判断し, X(買主)が昭和24年11月15日に行った契約解除を有効と認め,手付金から,すでに引き渡しを終えたタールの代価を差し引いた金額(9万2,500円)に対する▲Xの返還請求を認容しました。 ■買主の立場で考えると,予想外に品質の悪いタールで魚網の防腐と染色に役立たないばかりか,その管理を怠ったために,鉄工所の労働組合員に処分されたのだから,鉄工所と労働組合を訴えて損害賠償をするなら話がわかるが,うりもののタールを処分されて,それを引き渡すこともできないのに,代金だけ支払えというのは,合点がいかないということでしょう。高裁判決は,このような買主の立場に立った判決です。 ■しかし,売主の立場からいえば,タールを引取るといっていたにもかかわらず,屁理屈をこねて,取りに来ないから,経費のかかる人夫を引き上げたところ,タールが第三者に処分されてしまったので,悪いのは,買主の方ではないか。約束を破ったのは,買主の方なのだから,モノがなくなったとしても,約束どおり,代金だけは払ってもらう,ということになるのでしょう。 ■いずれにせよ,高裁判決に不服の売主は,最高裁に上告しました。