04TarCase
20/35 漁網用タール事件(4/5)調査官解説(三淵乾太郎)

【テロップ】
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【ノート】
この最高裁判決を解説した,最高裁調査官は,以下のように述べて,最高裁判決をさらに一歩推し進める評釈を公表しています。 原審は溜池に貯蔵してあったタールが全部▲滅失したことを認定し,これを乙(Y)の責に帰すべき事由による履行不能と見ている。 種類債権の場合と異なり,この場合は原判示のごとく履行不能というべきである。 ただ乙(Y)は善良なる管理者の注意義務を負うものではないから(400条),特別の事情のない限り,右不能は乙(Y)の責に帰すべき事由に因るとはいえないであろう。 ■ここでも,種類債権と特定債権との注意義務の違いが誤解されています。 ■特定物債権の場合に,民法400条によって,売主が,善管注意義務を負います。このことについて,争いはありません。 ■種類債権の場合には,確かに,民法401条は,売主の善管注意義務に触れていません。 ■しかし,そのことは,種類債権の売主が,厳格な調達義務を負うことを否定するものではありません。 ■むしろ,種類債権の場合には,売主は調達義務を負っているのですから,すなわち,善管注意義務を尽くした場合と,尽くさない場合とにかかわらず,中等の品質を有する商品を調達しなければならないのです。それだからこそ,民法の立法者は,種類債権の場合に,売主に,善管注意義務を課す必要を認めなかったのです。 ■したがって,種類債権の場合に,売主は善管注意義務を負わないからといって,注意義務の程度が軽くなることはないのです。調達義務は,桁外れに重い義務だからです。