04TarCase
22/35 「制限種類債権」の謎「いいとこ取り」と「ねつ造」による不毛の概念→Q2
【テロップ】
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【ノート】
最高裁が作り出した「制限種類債権」という概念について,それに付随する効果が必然的に生じるモノであるのかどうか,検討してみましょう。 制限種類債権の特色は,以下のとおりです。 ■第1に,制限種類債権も,種類債権と同様,初めから特定しているのではありません。この点で,種類債権と同様です。 ■第2に,制限種類債権は,特定物債権と同様に履行不能になりえます。この点は,特定物債権と同様です。 ■第3に,注意義務の程度ですが,ここが問題です。 ■特定物債権の場合には,民法400条によって,債務者は,善管注意義務を負います。 ■これに対して,種類債権の場合には,債務者は,善管注意義務を負わない代わりに,調達義務というさらに厳しい義務を負います。種類債権が不能とならないのは,調達が可能だからです。 ■ところが,「制限種類債権」という分類をしたとたんに,債務者は,調達義務を免れる上に,善管注意義務をも免れ,さらに,無償のために優遇されている無償のジュキ者の注意義務としての「自己のものと同一の注意義務で足りる」(民法659条)とされるのは,なぜでしょうか? ■債務者が,調達義務から免れるのであれば,善管注意義務を負うとするのでなければ,無償債務と有償債務との区別がなくなってしまい,バランスを欠くことになるのではないでしょうか。 ■注意義務が軽減される理由として,受領遅滞を持ち出すのであれば,それはそれとして,ありうる議論なのですが,本件の場合には,買主の受領期間は,契約締結から1年間であり,その期間以前に目的物であるタールが滅失しているのですから,本件で受領遅滞を持ち出すのは,無理があるのではないでしょうか? ■第4に,特定物債権の場合,品質不良があれば,民法570条の瑕疵担保責任が問題となります。また,種類債権の場合には,民法401条によって中等の品質かどうかが問題となります。 ■それにもかかわらず,「制限種類債権」と性質決定されたとたんに,なぜ,「通常 品質は問題とならない」ということになるのか,その根拠は不明です。 ■要するに,「制限種類債権」という概念は,履行不能になる点で調達義務を免除し,善管注意義務を負わないとして,無償のジュキ者と同じように,売主の注意義務を緩和し,さらには,品質不良の場合の責任を免除するという,民法の特定物債権と種類債権との間の微妙なバランスを破壊して,債務者だけに都合のよい債務を捏造しただけではないでしょうか? ■最高裁のいうことだから,合理性があるだろうというのでは,真理の探究の放棄です。 ■上記のように, 比較表による厳密な比較を通して,制限種類債権という概念から生じるご都合主義的な効果に対して,批判を加えるべきだと,私は考えています。