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8/25 通貨(貨幣と紙幣)の歴史貨幣の衰退,復権はあるか? ← 強制通用,Q3
【テロップ】
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【ノート】
本来,紙幣と硬貨とを束ねるべき貨幣という概念が,法律上は,逆転しており,紙幣の方が,貨幣よりも強制通用力が高いという現象は,なぜ生じたのでしょうか? ■不可解な現象に出会ったら,その解決のヒントは,必ず,歴史にあります。■ そこで,貨幣の歴史を少しだけ遡って,金本位制の時代の貨幣制度を見た上で, 現代の貨幣制度と比較してみましょう。 ■不可解な現象が生じている謎を解くことができると思います。 ■金本位制度のモトでは,本来の貨幣,すなわち,鋳造貨幣である金貨が最高の価値を持ち,紙幣は,兌換紙幣といって,金貨に兌換できるという従属的な地位にありました。 ■しかし,貨幣の中には,金貨とは異なり,銀貨や銅貨という補助貨幣も含まれていました。 ■また,紙幣には,民間の紙幣である「国立銀行券」という紙幣も含まれていました。 ところが,金本位制が廃止されたために,貨幣の中心的存在であった,金貨がなくなり,貨幣としては,補助貨幣だけが生き残ります。 ■そうすると,貨幣とは,補助貨幣をさすことになってしまいました。 ■つまり,金貨を欠く貨幣は,その価値を奪われ,紙幣に従属するものとなったのです。 紙幣については,民間の国立銀行券という,紛らわしい紙幣が廃止されます。 ■これによって,紙幣は,大蔵省(現在の財務省)が発行する紙幣だけに統一され,その価値を高めることになります。 ■そこで,金本位制が廃止された後の貨幣制度を見てみると,それ以前とは様相が異なり,紙幣と貨幣の価値が逆転していることがわかります。■ この間の経緯,民法の規定が出来上がるまでの議論については,古市 峰子「現金,金銭に関する法的一考察」▲金融研究 14巻4号(1995/12) 101-152頁を参照してください。 現代においては,貨幣とは補助貨幣のことを意味し,額面価格も,最大で500円に過ぎません。しかも,その強制通用力は,20倍の▲1万円までです。 ■それに比較して,紙幣は,額面価格は,千円から一万円であり,いずれの紙幣も無制限の強制通用力を有しています。 ■これが,本来,紙幣と硬貨とを束ねる概念のはずの「貨幣」という概念が,法律においては,紙幣よりも価値の低い地位しか与えられていない理由です。 ■しかも,貨幣としての硬貨は,財布が膨らんで困るという理由で,次第に敬遠される傾向にあります。 それに代わって,おつりの必要がないクレジットカードやプリペイド型の電子マネーが発達してきており,近い将来,硬貨は消滅する危機に瀕しています。 ■消費税によるおつりの増加は,交通機関の切符の自動販売機に関しては,現金による支払に対するおつりの返却のために,大きな負担がかかっており,交通機関によっては,電子マネーで運賃を支払った方が,現金で支払うよりも運賃が安くなる取り扱いもなされるようになっています。これによって,硬貨離れに拍車がかかっています。 ■将来的には,金額の高い買い物や送金には,現金よりも,ビットコイン等の仮想通貨やクレジットカード,預金通貨による振込みが使われるようになるでしょう。 ■そして,日常の取引には,電子マネーでの決済が増えていき,補助貨幣を伴ってこそ,決済手段として意味を有する紙幣と貨幣は,ほぼ消滅に近い規模に縮小するというのが,私の予想です。