07NonPerformance
10/35 帰責事由の判定(1/2)法学的視点→債権総論,Q5

【テロップ】
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【ノート】
債務不履行に基づく損害賠償請求権の要件のうち,最初の,債務者のキセキ事由(故意または過失)について説明します。 最初の質問は,キセキ事由とは何でしょうか? というものです。 ■キセキ事由とは,以下のように定義されています。 第1に,債務者にとって,損害の発生という結果が予見可能であるか,予見すべきであり, 第2に,債務の履行に際して,予想すべき結果を回避することが可能であるにもかかわらず, 第3に,結果回避の措置をとらないこと, ■すなわち,注意義務違反,または,結果回避義務違反とされています。 もっとも,予見可能性の意味には,キセキ事由の判断の際と,因果関係の判断の際とで,多少のブレがあります。 キセキ事由があるかどうかを判断する場合には, 債務者(基準は,通常の合理人)にとって,事前に,予見が可能かどうかが基準となります。 これに対して,因果関係があるかどうかを判断するに際しては, 裁判官(最高度の合理人)にとって,事後的に振り返って,判断基準の時点で,予見可能性があるかどうかが判断基準となります。 ■債務不履行に基づく損害賠償請求ができるかどうかの判断の順序は, ■第1に,損害が発生しているかどうか, ■第2に,債務者の行為と損害発生のとの間に法的な因果関係(相当因果関係)があるかどうか, ■第3に,債務者は損害発生を予見することができたか,できたとして,それを回避することができたかどうか ■というように,事実的判断から,徐々に,規範的な判断に向かいますので, ■因果関係の判断では,予見可能性を一般的に厳しく判断した上で, ■キセキ性の判断では,債務者の個別事情を考慮して,最終判断を下すという順序を踏むことが通常であるため, ■因果関係の場合の予見可能性の判断と,キセキ事由の場合の予見可能性の判断との間に差があっても,問題は生じません。むしろ,同じにしたのでは,因果関係の判断ののちに,キセキ事由の判断をおこなうことが,二度手間となって,意味を失うことになりかねません。