07NonPerformance
12/35 損害とは何か? →Q5差額説(あるべき財産状態 - 現実の財産状況)

【テロップ】
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【ノート】
損害とは何でしょうか?  ■損害額はどのようにして算定されるのでしょうか? ■債務不履行や不法行為に基づいて,損害賠償を請求するためには,被害者は,  第1に,加害者のキセキ事由(故意又は過失),  第2に,被害者に損害が発生していること,  第3に,加害者の行為と被害者の損害発生との間に,因果関係があること, という三つの要件を証明しなければなりません。 ■第1の要件である「キセキ事由」,すなわち,故意又は過失」については,すでに説明しましたので,つぎに,損害の要件について説明しましょう。 理論的には,損害とは,事故がなかったと仮定した場合の「あるべき財産状態」から,事故が生じたために陥った現実の財産状態を,引き算したものと考えられています。 ■損害の概念を,「あるべき財産状態から現実の財産状況を引いたもの」と考えるので,これを差額説と呼んでいます。 ■これが,損害の第一の定義です。 ■この定義を数式で表現すると,以下のようになります。 損害額 イコール あるべき収入マイナス カッコ▲現実の収入マイナス 現実の支出▲カッコとじる。 ■この数式のカッコを取ると, 損害額 イコール あるべき収入マイナス 現実の収入プラス 現実の支出■となります。 ■その上で,最初のふたつの項目をあわせて,カッコでくくって表現すると,つぎのようになります。 損害額 イコール カッコ▲(あるべき収入マイナス 現実の収入)▲カッコとじる▲プラス 現実の支出 ■ところで,カッコの中は,あるべき収入から現実の収入を引いたもの,すなわち,「逸失利益」ですから,損害額は,つぎのようにまとめることができます。 損害額 イコール 逸失利益(すなわち,消極的損害) プラス 積極的損害■となります。 ■これを損害額積み上げ方式と呼んでいます。 ■法律家の多くは,数学が苦手です。 ■引き算や割り算が入ると,とたんに理解が困難になる傾向があります。 ■このため,法律家には,足し算だけで損害が定義できる,「損害とは,現実損害と逸失利益の合計である」という定義の方が,人気があります。 ■民法の債権総論とか,不法行為の教科書で,「損害」という項目を読んでみると, ■以下のような,面白い理論が展開されていますので,実際に読んでみることをお薦めします。 ■すなわち,「損害とは,理論的には,差額説によっている。しかし,差額説は理論的にも問題があることが指摘されている。いずれにせよ,実務では,損害は,差額説ではなく,損害額積み上げ方式によって算定されている。」というものです。 ■法律家は,引き算と割り算に弱いという意味が理解できるのではないでしょうか?