07NonPerformance
31/35 解除の要件(3/3)債権者の無過失

【テロップ】
※各テロップ文字をクリックすると該当の場所がピンポイントで閲覧できます。



【ノート】
2015年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案は,解除の要件を,催告解除(541条),無催告解除(542条)の二つに分解し,債務者にキセキ事由がない場合にも,原則として解除を認めつつ,他方で,債権者にキセキ事由がある場合には,例外として,解除を認めない(543条)という構成をとっています。 解除の障害要件を規定した(新)民法543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)は,以下のように規定しています。 (新)第543条■債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは, 債権者は,前二条の規定による契約の解除をすることができない。 ■(新)民法543条は,債務者にキセキ事由がなく,債権者だけにキセキ事由がある場合には妥当です。 ■しかし,(新)民法543条は,以下の二つの点で,大きな問題を抱えています。 ■第1に,履行不能は,債務者のキセキ事由と債権者のキセキ事由が競合して生じることがあります。この場合には,過失ソウサイの場合と同様に,どちらのキセキ事由がより大きいかを考慮して,債務者のキセキ事由が大きいときは,解除を認めるべきでしょう。 ■このように,債権者にキセキ事由があるが,債務者にもキセキ事由があって,債務者のキセキ事由の方が,債権者のキセキ事由よりも,履行不能に対する寄与度が大きい場合には,解除が認められるべきですが,(新)民法543条では,これが認められないことになり,不当な結果を導きかねません。 ■第2に,先に述べたように,債権者の受領遅滞がある場合には,いかなる事情がある場合でも,(新)民法413条の2の規定によって,債務者にキセキ事由があると「みなされ」,その結果,常に,解除が認められないということになります。 ■このことが,タール事件の場合のような場合には,不当な結果を導くことは明らかであり,(新)民法543条は,具体的妥当性を確保するために改正が必要だと,私は考えています。 ■少なくとも,(新)民法543条は,施行さえる前に,以下のように修正されるべきでしょう。 ■(新)民法543条(修正私案) ■債務の不履行が,債務者の責めに帰すべき事由によって生じたのではなく,もっぱら,債権者の責めに帰すべき事由によって生じたものであるときは,債権者は,前二条の規定による契約の解除をすることができない。