07NonPerformance
5/35 5.債務不履行

【テロップ】
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【ノート】
債務不履行について学ぶことは,以下の4点です。 第1点は,債務不履行とは何か? という点について,通説である「債務不履行の三分類」を理解することです。 ■ただし,大学において,理解するということは,単に暗記するということではなく,なぜ三分類なのか? を問うことが重要です。 ■例えば,二分類ではダメなのか? など,通説を鵜呑みにしないで,疑問を投げかけながら,その理由を理解することが大切です。つまり,大学における学習は,単なる理解で終わらずに,なぜなのかという批判的な視点からの理解が必要なのです。 ■そのような批判的な視点で債務不履行の三分類を理解していくと,通説である▲三分類は,確かに便利な分類ではあるものの,三分類の宿命として,それぞれの境界が曖昧であることがわかります。 ■例えば,さきに学んだ「漁網用タール事件」の場合,鉄工所のため池に補完されたタールが滅失したかどうかは,買主には全くわからないので,訴訟における買主の請求は,「履行遅滞に基づく契約解除」だったことを思い出すとよいでしょう。 ■不能だと確定したのは,訴え提起後に,裁判所で行なわれた証拠調べによってでした。 ■このように考えると,履行遅滞と,履行不能とは,契約当事者にとって,初めから明確に分類できるものなのでしょうか? ■例えば,履行期に履行がないとしても,それは,のちに履行される可能性のある「履行遅滞」なのか? それとも,永遠に履行されることのない「履行不能」なのか? いったい,いつになったら,その区別が確定するのでしょうか? ■このように,よく検討してみると,通説の三分類は,ある場合には,チョウフクしており,しかも,債務不履行の一形態である「履行拒絶」のような場合には,履行遅滞でも,履行不能でも,不完全履行でもないため,三分類のどこにも入らないという事態が生じていることも理解できます。 ■しかし,批判的に検討するということは,批判のための批判を意味するのではありません。批判を通じて,新たな考え方を創造することを目指さなければなりません。 ■この講義では,三分類の欠陥を修復するものとして,国際的な基準とされてきている▲二分類説を紹介し,三分類説を批判的に理解する方法について説明します。 第2点は,債務不履行に基づく損害賠償請求の三つの要件,すなわち,(1) 債務者のキセキ事由とは何か? (2) 損害とは何か? (3) 債務者のキセキ事由と損害発生との間の因果関係とは何か? について,しっかりと理解することです。 第3点は,債務不履行に対する救済策としての履行強制について,民法414条を核として,民事執行法による強制執行の方法の概略を理解することです。 第4点は,債務不履行に対する被害者の救済策の最後の方法としての,契約解除について,危険負担との関係を考慮して理解することです。 ■以上の4点を理解するためには,大変な量の学習が必要ですが,債務不履行とその救済策を学ぶことは,債権総論の学習の中で,最も重要なテーマの一つですので,しっかりと理解するようにしましょう。