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7/35 債務不履行の二分類(履行期に履行があるかどうか?)→Q5

【テロップ】
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【ノート】
通説である債務不履行の三分類に欠陥があることがわかったので,欠陥のない新しい分類を行なうことにしましょう。■ 債務不履行とは, 「債務の本旨に従った履行がないこと」という,民法415条の定義は,そのまま維持します。 ■つぎの分類を三分類ではなく,明確な二分類にします。 ■その場合の分類の基準は,「履行期に履行があるか,ないか?」という,疑問の余地のないものにします。 債務不履行の二分類の第1に来るのは,履行なしに履行期が経過するという事実だけで判断できる,したがって,最も有用な概念である「履行遅滞」です。 ■極端なことをいえば,「履行期に履行がない」場合というのは,「履行遅滞」だけで済ませることができます。 ■もっとも,履行遅滞の原因が,債務者の履行拒絶という明確な意思に基づいている履行拒絶,および,履行ができないという,履行不能を分類に加えることが可能です。この点で,二分類説は,履行拒絶を分類に加えることができないという,欠陥を有する三分類説の問題点を克服しています。 ■履行不能の概念は,危険負担の問題が生じる場合には,意味を持っていたのですが,最近の新しい考え方,または,民法(債権関係)改正によって,その意味は,極端に低下しています。 ■なぜなら,民法改正に際しては,危険負担の規定が削除されることになり,たとえ,債務者にキセキ事由がない履行不能の場合でも,債権者は解除ができることになったため,履行不能の概念は,理論上も,その有用性が失われつつあるからです。 ■履行不能は,もともと,その概念があいまいです。物理的な不能ばかりでなく,社会的不能という概念があり,不能か不能でないかの判断がむつかしいばかりでなく,履行期の時点で履行不能を証明できるとは限らないため,訴訟上の有用性も失われつつあります。 ■これに対して,履行遅滞の効果については,民法541条のように,相当期間を定めて催告をしても履行がない場合に履行がない場合にのみ解除ができる場合と,民法542条のように,催告なしに解除が可能な場合との二つに分類する必要があるものの,すべての場合を含めて,相当期間を定めて催告をすれば,履行遅滞の場合でも,履行拒絶の場合でも,さらに,履行不能の場合でも解除ができるのですから,理論上も,また,実務上も,最も有用な概念といえます。 ■(履行不能が履行期後に明らかになったタール事件においても,原告は,履行遅滞を理由に契約の解除を訴求しています)。 ■逆からいえば,履行拒絶と履行不能の概念の有用性は,履行期が到来する以前に履行拒絶と履行不能が明らかになった場合,または,履行期時点で,履行拒絶か履行不能かが判明している場合に限定されます。この場合には,通常の履行遅滞とは異なり,催告なしに解除ができる点に特色があるからです。 債務不履行の二分類による第2の重要概念は,不完全履行(瑕疵ある履行)です。 ■この概念も,履行期に履行があったことと,その履行に不完全な点(瑕疵)があったという事実のみで判断できる点で,明確な概念です。