08CivilPenalty
17/24 消費者契約法 第1条

【テロップ】
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【ノート】
民法の任意規定の役割について,消費者保護の観点から革命的な変更をもたらしているのが,消費者契約法▲第10条です。 ■消費者契約法▲第10条の説明に入る前に,消費者契約法の全体像を把握しておきましょう。 ■消費者契約法は,他の法律と異なり,第1条がすべての条項をうまくまとめて規定しています。第1条を理解するだけで,消費者契約法をほぼすべて理解することができるといってよいほど,よくできた条文です。 消費者契約法▲第1条(目的)は,以下のように規定しています。■ この法律は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ, ■ここで規定された▲第1節は,現代社会においては,民法が前提としてきた当事者間の力の均衡が,崩れていることの認識,すなわち,専門家である事業者と,素人である消費者との間には,情報力,交渉力に差があり,それが,民法とは異なる消費者契約法の必要性を産んだのだということを高らかに宣言しています。■ 事業者の一定の行為により消費者が誤認し,又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに, ■ここで規定されている▲第2節は,消費者契約法▲第4条を通じて,消費者が,詐欺または強迫による取消権を民法96条よりも主張しやすくしたことを宣言しています。■ 事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか, ■ここで規定されている▲第3節は,民法が契約の無効を,民法90条の公序良俗違反に限定しているのに対して,消費者契約法は,第8条から第10条までを通じて,事業者の不当な約款条項を無効とすることを宣言するものです。■ 消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより, ■ここで規定されている▲第4節は,事業者の不当勧誘や不当契約条項を消費者に代わって消費者団体が差し止めることができるようにすることを宣言するものです。 消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。 ■ここで規定されている▲第5節は,特別法が最後に唱えるお題目のようなものですが,消費者契約法に限っては,実質的な規定となっています。 ■なぜなら,第1節から第5節までが,民法が,現代社会において,弱者保護を実現できないことに対する,痛烈な批判となっているからです。 ■民法(債権関係)改正は,このような消費者契約法からの批判をうまく取り入れることができず,全体的には,内容が拙劣なものに終わってしまいました。 ■もっとも,部分的には,消費者契約法からの民法批判に答える条項が追加されています。 ■たとえば,民法(債権関係)改正は,民法第3編(債権)第2章(契約)第1節(総則)に追加された第5款(定型約款)の最初の条文である548条の2▲第2項は,以下のように,つぎに検討する消費者契約法▲第10条をほとんど丸ごとコピーしています。 ■民法548条の2▲第2項■前項の規定にかかわらず,同項の条項のうち,相手方の権利を制限し,又は相手方の義務を加重する条項であって,その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして〔民法〕第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては,合意をしなかったものとみなす。