08CivilPenalty
22/24 民法420条の改正(国会提出案の拙劣)

【テロップ】
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【ノート】
2015年3月31日に国会に提出された「民法の一部を改正する法律案」によって,民法420条は改正されることになりました。 ■そこで,民法420条の改正の動向を総括することによって,今回の講義を締めくくりたいと思います。 ■民法420条は,どのように改正されるのでしょうか? ■まず,現行民法の条文を確認しておきましょう。 民法420条(賠償額の予定)■ 民法420条▲第1項■当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。 この場合において,裁判所は,その額を増減することができない。 第2項,第3項<略> ■2015年3月31日に国会に提出された「民法の一部を改正する法律案」は,現行民法420条を次のように改正するとしています。 民法420条(賠償額の予定)■ 民法420条▲第1項■当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。■ 第2ブン<削除>■ 第2項,第3項<修正せず> ■時代遅れとなった民法420条を改正することは,消費者保護を願う人々の念願となってきました。 ■したがって,民法改正案が,民法420条を改正するとしたことは,評価に値します。 ■しかし,この改正案は,もしも,賠償額の予定が過大である場合に,裁判所はどのような処置をすることができるのか? 何を基準に,どのような効果を付与することができるのか? という,肝心なことについて,なんらの規定も用意していません。 ■さきに説明した消費者契約法▲第9条と比較してみましょう。 ■消費者契約法▲第9条の場合には,「平均的な損害の額を超えるもの」について,その超える部分を無効としています。そのような基準が明確に示されないとすれば,民法420条を改正した意味がほとんど失われてしまいます。 ■消費者契約法▲第10条の精神を踏まえて,民法の「任意規定を活用する」のであれば, ■民法420条第1項にタダシガキを置いて,「民法416条に規定する損害賠償額を超える損害額の予定は,無効とする」という改正案が提言されるべきだったと,私は考えています。 ■いずれにせよ,民法420条の改正案からも判断できるように,今回の民法改正案には,改正案の起草者たちが弱者保護に対する意欲を欠いていること,弱者保護の意欲のモトとなる豊かな発想力をも欠いていることが明らかです。 ■今後は,民法の中に,弱者保護の精神をどのように盛り込むべきかが検討されなければなりません。 ■教育目的に,「人間の尊重,弱者救済の視点から,学部における教育・研究を行う」ことを掲げる明治学院大学の出番が近づいているのではないでしょうか? ■皆さんの学習意欲の進展と,弱者保護のための奮起を期待したいと思います。