08CivilPenalty
5/24 契約自由と損害賠償額の予定

【テロップ】
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【ノート】
今回の講義に限定した目次です。 損害賠償額の予定における契約自由とその制限について説明します。 最初に,契約自由の原則について概観します。 ■次に,民法91条,民法92条について,考察します。 そして,契約自由の原則をかなり明確に表現している民法420条について考察します。 民法420条1項は,「当事者は,債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において,裁判所は,その額を増減することができない。」と規定しています。 ■つまり,民法420条は,契約当事者が決定したことに対して,裁判官といえども,それを変更することを許さないとしているのであり,この規定は,契約自由の原則を極端にまで推し進めた規定となっています。 ■しかし,民法420条は,約款と併用すると,粗悪な商品,または,粗悪なサービスを提供する悪質業者が,消費者によって契約が解除されることを想定しつつ,法外な損害賠償額の予定をすることによって,荒稼ぎすることを助長しており,消費者被害を救済する際の最大の障害となってきました。 歴史を遡ると,民法420条は,自由・ビョウドウ・博愛をスローガンとして生まれたフランス民法1152条に倣って起草されたものです。 これに該当するドイツ民法343条が,法外な違約金の規定に対して裁判官による調整を認めていたのに反して, ■フランス民法1152条に倣ったわが国の民法420条は,裁判官の干渉を許していませんでした。 しかし,フランスでは,この1152条が消費者被害の増加を招いたことから,1985年に改正され,損害賠償額の予定は,裁判所によって増減されることになりました。 ドイツ民法は,当初から,裁判所の干渉を認めていましたので,先進諸国で,損害賠償額の予定について無制限の契約自由の原則を維持しているのは,わが国だけとなってしまいました。 この事態に,私たちはどのように対処すべきなのでしょうか? 特別法としては,カップ販売法第6条が代表的です。 消費者契約法9条, 消費者契約法10条のほか, 2015年3月31日に国会に提出された民法(債権関係)改正案を参照しながら,民法のあるべき姿を考えることにしましょう。