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13/19 被代位権利の行使権限者の競合民法改正法案(2015)

【テロップ】
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【ノート】
民法改正案による民法423条の5▲(債権者の取立てその他の処分の権限等)は,以下のように規定しています。■ 民法423条の5■債権者が被代位権利を行使した場合であっても,債務者は,被代位権利について,自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。■ この場合においては,相手方も,被代位権利について,債務者に対して履行をすることを妨げられない。 ■債権者代位権の場合においても,代理権の場合と同様に,代理人よりも本人の権限を優先させることを明らかにした規定です。 ■確かに,ダイイの目的となる債権(被代位債権)の債権者は,あくまで,債務者本人なのですから,債権者が行使する代位権よりも,債務者の行使権限が尊重されるべきでしょう。 ■従来は,このことを明らかにするために,債権者代位権を行使できる要件として,債務者が権利を行使しないとき,または,債務者が無資力のときに限定するという解釈を採用してきました。 ■たとえば,最高裁第三小法廷昭40・10・12判決▲民事判例集19巻7号1777頁は,以下のように述べていました。 ■金銭債権を有する者は,債務者の資力が当該債権を弁済するについて十分でない場合にかぎり,民法第423条第1項本文の規定により,当該債務者に属する権利を行使することができると解すべきである。 ■しかし,判例の中には,いわゆる債権差代位権の転用の場合など,一定の要件を満たす場合には,無資力要件を必要としない判例として,最高裁第一小法廷昭和50年3月6日判決▲民事判例集29巻3号203頁があり,以下のように述べていました。 ■買主に対する土地所有権移転登記手続義務を相続した共同相続人の一部の者が右義務の履行を拒絶しているため,買主が,相続人全員による登記手続義務の履行の提供があるまで,代金全額について弁済を拒絶する旨の同時履行の抗弁権を行使している場合には,他の相続人は,自己の相続した代金債権を保全するため,右買主が無資力でなくても,これに代位して,登記手続義務の履行を拒絶している相続人に対し買主の所有権移転登記手続請求権を行使することができる。 ■このような判例の動向を考慮した上で,今回の民法改正法案は,債権者代位権の行使要件から,債務者の不行使要件,及び,無資力要件を排除する一方で,その代わりに,他方で,債務者を保護するために,債務者の優先権が規定されたと考えることができます。 ■もっとも,債権者代位権の行使の際に,債務者の権利を優先するといっても,また,債権者代位権は,債務者が無資力である場合に限るといっても,結果は似たようなものなのですから,債権者代位権の従来の不行使・無資力要件が,要件を緩めながらも,民法423条の5▲の規定によって,その裏に隠されていると考えることもできると思います。