10ActionPaulienne
14/46 詐害行為取消権(3/3)→Q8取消しの意味に関する学説→債権総論

【テロップ】
※各テロップ文字をクリックすると該当の場所がピンポイントで閲覧できます。



【ノート】
折衷説は,形成権説と請求権説の理論的な弱点を克服するために形成された説です。 ■折衷説は,形成権とは異なり,サガイ行為の取消しを絶対的な取消しとは考えず,債権者と受益者または転得者との間だけで取消しの効果が生じると考えます。 ■債権者と受益者または転得者との間では,サガイ行為は相対的に取り消されるため,債権者は,受益者または転得者だけを訴えればよいことになります。 ■折衷説によれば,取消しは債権者と受益者または転得者の間だけで効力が生じるため,サガイ行為は,債務者と受益者との間では,完全に有効となります。 ■そうすると,確かに,債権者は,相対的な取消しに基づいて,受益者または転得者に対して,逸失財産を回復するよう請求することができます。しかし,債務者と受益者との間のサガイ行為は有効であるため,債務者は,原状回復に応じる義務はありません。 ■そこで,原状回復は,債権者に逸失財産を引き渡すことになりますが,そうすると,それ自体が,他の債権者を害するサガイ行為となってしまいます。 ■つまり,サガイ行為取消権とは,総債権者のための責任財産を,一人の債権者のみが独占することを防止するための制度であるにもかかわらず,サガイ行為取消権によって,訴えを提起した一債権者のみが,逸失財産を取得し,自らの債権を優先的に回収する結果となってしまい,サガイ行為取消権自体が,第一のサガイ行為を否定しつつ,第二のサガイ行為を認めるという矛盾に陥ることになるのです。 ■サガイ行為取消権と比較される破産の場合には,債務者に代わって総債権者を代表する破産管財ニンが選任され,破産財団の財産を保持するために,否認権を行使して,逸失した財産を破産財団に復帰させ,総債権者の利益のために,その財産から各債権者に対して,適切な手続を踏んで配当を行います。 ■しかし,サガイ行為取消権の場合には,総債権者を代表する管財ニンは選任されないのですから,サガイ行為取消権を行使する一債権者に対して逸失財産の返還を認めれば,モラルハザード(一債権者が返還を受けた財産,特に,金銭から自らの債権を優先的に回収してしまおうとする誘惑にかられること)が発生することは,目に見えています。 ■したがって,逸失財産を受益者または転得者に置いたまま,強制執行を行い,その手続の中で,総債権者が相応の配当を受けることが重要なのです。 ■それを目指すのが,次に紹介する責任説です。