10ActionPaulienne
16/46 詐害行為取消権(3/3)→Q8取消しの意味に関する学説→債権総論
【テロップ】
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【ノート】
サガイ行為取消権の法的性質を民法の条文と整合的に説明できるのが,サガイ行為取消権に関する訴権説または対抗不能説です。 ■この説は,サガイ行為取消権の取消しを民法120条以下の取消しとは考えません。 ■第1の理由は,サガイ行為取消権におけるいわゆる取消権者は,一般債権者なので,もしも,法律行為の取消しと考えると,民法120条の規定に反することになるからです。 ■第2の理由は,サガイ行為取消権の制度は,小破産といわれているように,破産法第160条以下の否認権の制度に非常によく似ており,これを民法上の否認権(民法37条5項)の意味で理解するのが妥当だからです。 ■民法上の否認の考え方は,つぎに詳しく説明しますが,「第三者がある行為を否認できる」ということは,民法では,「ある行為の効果の一部が第三者に対抗できなくなる」という意味です。 ■つまり,サガイ行為取消権を民法上は,債務者の責任財産に属する財産を逸失させるサガイ行為を債権者に対抗できなくし,債権者は,逸失財産をあたかも債務者の一般財産に属するものとみなして,強制執行をすることを可能にする制度であると考えるのです。 ■したがって,債権者は,受益者または転得者のみに対して,訴えを提起すればよく,債務者には,参加的効力を及ぼすために,訴訟告知をすることで足ります。 ■サガイ行為は,サガイ行為取消権の行使によっても,有効のままですが,サガイ行為の効力のうち,責任財産の移転の効果は否認されるため,債権者は,第三者である受益者または転得者に対して,逸失した財産に対して強制執行が可能となります。 ■以上の学説の形成過程を眺めることによって,以下のことが理解できたのではないでしょうか。 ■第1に,サガイ行為取消権の法的性質が,民法120条以下の法律行為の取消権とは異なることが理解できたと思います。 ■第2に,サガイ行為取消権は,破産法上の否認権に非常によく似ているが,破産手続きのように,破産管財ニンによる債権者間の公平な取り扱いを期待できない以上,破産の場合の否認権の行使のように,逸失財産を一債権者への返還や支払を認めることは,モラルハザードを招来する危険な方法であり,サガイ行為取消権が,新たなサガイ行為を認めることになるという矛盾に陥る危険性が高いことが理解できたと思います。 ■第3に,サガイ行為取消権としての民法上の否認は,破産法上の否認権とは異なり,債務者から逸失した財産を一債権者に過ぎないサガイ行為取消権者へと返還するのではなく,受益者または転得者のもとで,逸失財産に対する強制執行を実現することが適切であることが理解できたと思われます。