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28/46 否認と対抗不能との関係(3/3)民法177条(不動産物権変動の対抗要件)の意味→Q8
【テロップ】
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【ノート】
否認と対抗不能との相互関係の続きです。 ■ここでは,これまでとは逆に,対抗不能の文章を否認という用語を使って書き換えます。■ 「Yの行為は,Xに,対抗することができない」という文章を「否認」を使って書き換えてみます。 下の文章の目的語である「Xに」は,上の文章では,主語となります。■ つまり,上の文章は,「Xは,」で始まります。■ 下の文章の主語である「Yの行為は,」は,上の文章では,目的語となります。■ つまり,上の文章は,「Xは,Yの行為は,」となります。■ 下の文章の述語である「対抗することができない」は,上の文章では,述語として,その位置は変わりませんが,用語が,「否認することができる」に変わります。■ したがって,出来上がった上の文章は,「Xは,Yの行為を,否認することができる」となります。 ■この変換規則を使って,難解とされている民法177条(不動産物権変動の対抗要件)の趣旨を明らかにしてみましょう。 ■民法177条の趣旨は以下の通りです。 第1買主(Y)の物権行為(A)は,先に登記を得た第2買主(X)に,対抗できない。 ■この命題を,否認を使って書き換えてみましょう。 ■そうすると,受動態のような否定形の文章のために,ぼんやりとしか理解できなかった民法177条の意味が,能動態のような肯定文となるために, ■「どのような行為をした人が,誰に対して,どのような効果を生じさせるのかということが明確になります。 ■書き換えた結果は,以下のとおりです。 先に登記を得た第2買主(X)は,第1買主(Y)の物権行為(A)を,否認できる。 ■この場合も,書き換え原則が,そのまま妥当しています。■ 下の文章の目的語が,上の文章の主語になっています。■ 下の文章の主語が,上の文章の目的語になっています。■ 下の文章の述語は,対抗不能が否認に書き換えられて,上の文章の述語になっています。 ■このような書き換え原則の効用は,以下の点にあります。 ■民法177条は,不動産二重譲渡の場合のメカニズムを明らかにする条文ですが, ■条文そのものを読んでも,受動的な否定文で欠かれているために,理解するのが困難です。 ■しかし,書き換え原則によって,能動的な肯定文にすると,その意味が明確となります。 ■すなわち,不動産物権を第一売買によって取得しても,登記をせずに放置していると,他人ブツ売買をした第二買主が,先に登記を得ることによって,第一売買の物権行為が否認され,されに,追完されて,初めに遡って,第二買主が完全な所有権を取得するという,不動産売買の二重譲渡のメカニズムを理解することができるようになります。 ■この問題は,重要な問題なので,次に,民法176条と民法177条との関係をわかりやすく説明する図とともに,さらに詳しく説明することにします。