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4/46 債権の対外的効力

【テロップ】
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【ノート】
債権は,物権とは異なり,当事者間のみで効力を生じるとされてきました。 ■しかし,債権も,例外的に,当事者以外にも効力を生じる場合があります。 第1は,第三者への直接請求を可能にする制度です。 債権者代位権が典型例ですが, その進化系として,民法613条の賃貸人の転借人に対する直接訴権,および,自賠法16条の被害者の保険会社への直接訴権があります。 ■債権者代位権は,債権者Aの債務者Bに対するアルファ債権を保全するために,債務者Bが第三債務者Cに対して有するベータ債権(被代位権利)を債権者Aが債務者Bに代わって,第三債務者であるCに対して権利を行使する制度です。 ■債権者Aが,契約関係にない第三者Cに対して直接に権利を行使するという点で,債権の相対性に対する例外となっています。 第2は,債権者が契約関係にない第三者に対して強制執行を認める制度,すなわち,債権者に追及効を認める制度です。 サガイ行為取消権がその典型例です。 ■サガイ行為取消権は,債権者が債務者の一般財産に対して強制執行をすることができるという債権の掴取力を強化して,第三者に対しても,強制執行を可能にするものです。 ■たとえば,債権者Aが債務者Bに対して,債権を有していたところ,債務者Bが債務を弁済できなくなり,主要な財産を他の債権者であるCに譲渡して,債権者Aの強制執行を妨害しようとした場合に,債務者Bの他の債権者Cへの譲渡行為を否認し,債権者Aの債務者Bに対する債務名義に基づいて,C名義となった財産に対して強制執行を可能にするものです。■ この制度は,抵当権者Aが抵当権設定者Bに対して抵当権を実行できるだけでなく,もしも,抵当不動産をBが第三者であるCに譲渡したとしても,AがCの財産に対して抵当権を実行できるのと類似しています。 ■サガイ行為取消権の追及効の根拠は,第三者Cが悪意であることです。 ■これに対して,抵当権の追及効の根拠は,抵当権の登記があることです。 ■両者にはその根拠に違いがあるように見えますが,登記は,第三者への公示機能を有しており,登記によって,第三者は悪意とみなされると考えると,サガイ行為取消権の追及効と,抵当権の追及効との間には,本質的な差はないということができます。 ■抵当権者は,すべて,債権者でもあります。債権を失えば,担保物権のフジュウ性によって,抵当権は消滅するからです。 ■抵当権を有する債権者が,第三者に対して追及効を有するのは,それが物権だからというわけではなく,登記によって,その追及効がすべてのヒトに周知されているからです。 ■それと同様に,サガイ行為取消権が第三者に対して追及効を有するのも,第三者が債務者の責任財産であるものを取得することが,他の債権者を害することを知った上で取得したからなのです。