第10回 離婚の効果

2004年5月11日

名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂


講義のねらい


離婚は夫婦という団体の解散に相当する。したがって,離婚の手続は,婚姻によって成立した夫婦関係を清算する手続と考えることができる。

夫婦関係の清算手続きとしての離婚手続は,未成熟子に関する監護権者の決定(民法766条),親権者の決定(民法819条),本人の氏に関する復氏・婚氏続称の決定(民法767条),夫婦財産に関する清算・分割手続(民法768条)からなる。

ここでは,夫婦財産の清算・分割について,具体例の検討を通じて理解を深めることにする。


演習


問1 最二判昭46・7・23民集25巻5号805頁(八田好子 vs. 野中耕作)を読んで,事実を要約しなさい。

問2 財産分与(家審9(1)乙5,旧人訴15(1)→人訴32条),婚姻費用の分担(家審9(1)乙3),離婚における慰藉料請求(旧人訴7(2)→人訴17条2項,3項,8条)について,それぞれの管轄裁判所,手続の違いについて論じなさい。

問3 組合の解散の場合,残余財産は,各組合員の出資の価額に応じて分割されることになっている(民法688条)。離婚の際の財産分与は,夫婦財産の財産分割とどの点で異なり,どの点で類似しているかについて論じなさい。

問4 財産分与請求権,婚姻費用の分担の清算請求権,慰藉料請求権の関係について論じなさい。


参照条文


第766条 〔離婚後の子の監護〕
(1) 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議でこれを定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
(2) 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
(3) 前2項の規定は、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生ずることがない。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第767条 〔離婚による復氏〕
(1) 婚姻によつて氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつて婚姻前の氏に復する。
(2) 前項の規定によつて婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、離婚の際に称していた氏を称することができる。 (昭五一法六六・一部改正)

第768条 〔離婚による財産分与〕
(1) 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
(2) 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。但し、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
(3) 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第688条〔清算人の職務権限、残余財産分割方法〕
清算人ノ職務及ヒ権限ニ付テハ第78条〔法人の清算人の職務権限〕ノ規定ヲ準用ス
(2) 残余財産ハ各組合員ノ出資ノ価額ニ応シテ之ヲ分割ス

第769条 〔離婚による復氏の際の祭具等の承継〕
(1) 婚姻によつて氏を改めた夫又は妻が、第897条第1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
(2) 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。 (昭二三法二六〇・一部改正)

第771条 〔協議離婚の規定の準用〕
第766条乃至第769条の規定は、裁判上の離婚にこれを準用する。