2004年6月29日
名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂
相続人の相続分の計算方法を習得するとともに,それを逆算することによって,被相続人の死亡以前の家族の財産の共有状態を推測しようというのが今回の講義のねらいである。
問1 被相続人甲に配偶者乙と3人の子A,B,Cがいたとする。乙,A,B,Cのそれぞれの相続分はいくらか。
乙 … 1/2, A=B=C … 1/2*1/3=1/6
年代 | 配偶者相続分の変化 | 子が存在 | 子が不存在 | |
直系尊属 | 兄弟姉妹 | |||
1962年以前 | 配偶者の相続分 | 4分の1 | 3分の1 | 2分の1 |
1980年以前 | 3分の1 | 2分の1 | 3分の2 | |
1980年以後 | 2分の1 | 3分の2 | 4分の3 |
問2 被相続人甲に配偶者乙と内縁の配偶者丙がおり,甲と乙との間に子A,B,甲と丙との間に子Cがいたという場合には,それぞれの相続分はいくらになるか。
乙 … 1/2, A=B … 1/2*2/5=1/5, C=1/2*1/5=1/10
問3 家族法判例百選〔第6版〕第56事件(最大決平7・7・5民集49巻7号1789頁)を読んで以下の点を検討しなさい。
問4 被相続人甲には,父母(内縁)を同じくする妹Αと父の婚内子Βがいる。すでに父母が死亡し,甲に子がいない場合,Α,Βの相続分はどうなるか。
Α … 2/3, Β … 1/3
問5 被相続人甲に妻乙と3人の子A,B,Cがいたが,Aは二人の子a1,a2をもうけた後,被相続人甲よりも先に死亡していたとする。乙,B,C,a1,a2の相続分はいくらになるか。
乙 … 1/2, B=C … 1/2*1/3=1/6, a1=a2 … 1/2*1/3*1/2=1/12
問6 被相続人甲に妻乙,子A,B,Cがあり,被相続人が遺言でAの相続分を2分の1とする指定を行っていた場合,それぞれの相続分はどうなるか。
問7 被相続人甲には,配偶者乙と3人の子A,B,Cがいたが,遺産7,000万円を残して死亡した。甲は生前,Aには営業の資金として,1,200万円を,Cには,結婚の際に持参金として800万円を与えており,Bには,1,000万円を遺贈したとする。乙,A,B,Cの具体的な相続分はいくらになるか。
乙 … (7,000+1,200+800)*1/2=4,500
A … (7,000+1,200+800)*1/2*1/3=1,500 1,500-1,200=300
B … (7,000+1,200+800)*1/2*1/3=1,500 1,500-1,000=500
C … (7,000+1,200+800)*1/2*1/3=1,500 1,500-800=700
問8 家族法判例百選〔第6版〕第57事件(最一判平12・2・24民集54巻2号523頁)を読んで,以下の点を検討しなさい。
問9 被相続人甲が遺産8,000万円を残して死亡した。Zには,配偶者乙,子A,Bがおり,子Aの寄与分が3,000万円だったとする。それぞれの具体的な相続分はどうなるか。
乙 … (8,000-3,000)*1/2=2,500
A … (8,000-3,000)*1/2*1/2+3,000=4,250
B … (8,000-3,000)*1/2*1/2=1,250
問10 家族法判例百選〔第6版〕第58事件(東京高決平3・12・24判タ794号215号)を読んで,以下の点を検討しなさい。
問11 家族法判例百選〔第6版〕第71事件(最三判平8・12・17民集50巻10号27778頁)を読んで,以下の点を検討しなさい。
1 夫婦のみ(親なし,兄弟なし,子なし)
最初は,夫婦の親がすでに亡くなっており,夫婦には兄弟もなく,子もいないという場合を想定する。この場合,夫婦の相続人は,お互いの配偶者だけである。
従来の考え方 | 結果 | 共有持分の理論 | ||||||||||||||||||||
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← |
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全て夫 の財産 |
妻が 相続 |
妻 1 | 共有の 弾力性 |
仮想持分 夫 1/2 妻 1/2 |
2 夫婦と子
従来の考え方 | 結果 | 共有持分の理論 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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→ |
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← |
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全て夫の財産 推定相続人は 妻と子 |
夫の 死亡 |
妻 1/2 子 1/2 |
共有の 弾力性 |
仮想持分 夫 1/3 妻 1/3 子 1/3 |
3 夫婦(子なし)と親
従来の考え方 | 結果 | 共有持分の理論 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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→ |
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← |
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全て夫の財産 推定相続人は, 妻と親 |
夫の 死亡 |
妻 2/3 親 1/3 |
共有の 弾力性 |
仮想持分 夫 2/5 妻 2/5 親 1/5 |
4 夫婦(親なし,子なし)と兄弟
従来の考え方 | 結果 | 共有持分の理論 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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全て夫の財産 推定相続人は, 妻と兄弟 |
夫死亡 | 妻 3/4 兄妹 1/4 |
弾力性 | 仮想持分 夫 3/7 妻 3/7 兄妹 1/7 |