“Do for others”の精神を法律的に厳密に突き詰めると,どのような意味になるのでしょうか?
■“Do for others”の精神については,自分が望むことと,他人が望むこととは,必ずしも一致するとは限らないため,場合によっては,「小さな親切,大きなお世話」という事態が生じかねません。
“Do for others”を法律的に,厳密に考察すると,どのようなことになるのでしょうか?■
■この点について,民法には,「頼まれもしないのに他人のためにサービスを提供する」という▲事務管理に関する規定があります。
六法を開いて,民法697条(事務管理)の条文を読んでみましょう。
民法697条▲第1項■義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は,その事務の性質に従い,最も本人の利益に適合する方法によって,その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
民法697条▲第2項■管理者は,本人の意思を知っているとき,又はこれを▲推知することができるときは,その意思に従って事務管理をしなければならない。■
この条文で重要なことは,第1項▲が原則に見えますが,むしろ,第2項▲が原則であり,「他人の意思」を尊重することが何よりも大切だということです。
他人の意思を知ることも,推知▲することもできないという,例外的な場合にのみ,第1項,すなわち,「最も本人の利益に適合するように行動する」という有名な▲「適合性原則」▲が適用されるのです。