06OptionMeans&Result
12/29 売主の追完権売主に選択権を与えると買主の権利が弱められませんか?(A.S)

【テロップ】
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【ノート】
売主の選択債務について,追加をします。 ■売主の追完権というテーマですが,売主は,売買契約上,契約に適合する目的物を引き渡す債務を追いますので,売主の追完権とは,債務者である売主に選択権がある選択債務だということができます。 国際物品売買契約に関する国際連合条約,すなわち,わが国も2008年に批准した▲「ウィーン売買条約」▲においては, その第48条〔売主の追完権〕に,以下のような規定があります。■ ウィーン売買条約▲第38条▲第1項■次条〔契約解除〕の規定が適用される場合を除くほか、売主は、引渡しの期日後も、不合理に遅滞せず、かつ、買主に対して不合理な不便又は買主の支出した費用につき自己から償還を受けることについての不安を生じさせない場合には、自己の費用負担によりいかなる義務の不履行も追完することができる。■ ただし、買主は、この条約に規定する損害賠償の請求をする権利を保持する。 ■つまり,ウィーン売買条約においては,商品が契約適合性を欠いている場合,すなわち,商品に瑕疵がある場合には,買主に瑕疵修補請求権,損害賠償請求権,代替品請求権,解除権を与えるとともに,売主に追完権を与えることによって,バランスをとっているのです。売主の追完権は,買主の損害賠償請求権を除く,買主の権利に優先しますので,売主の選択権として構成するのが妥当です。 ■このことは,一見したところ,買主の瑕疵担保請求権を制限するように見えます。 ■第6回の講義後のリアクションペーパーにも,「売主に選択権を与えるのは買主に不利なのではないかと思いました」(A. S.)という感想が述べられています。 ■しかし,ウィーン条約においても,また,わが国の民法570条,566条に照らして考えても,買主の権利のうち,解除権は瑕疵が,契約目的を達成することができないほどに重大である場合に限られているのですから,売主が,契約に適合する代替品を引き渡したり,適切な修補をした場合には,買主は,契約解除権を行使できません。 ■したがって,売主の追完権を認めることと,買主の瑕疵担保責任を修補請求,代替品請求権へと拡大することとは,矛盾するものではありません。 ■商品に瑕疵がある場合には,売主は,瑕疵が重大な場合には,買主には契約解除権が与えられているのですから,それを行使すればよく,売主は,それに対して,追完権を行使して,修補をするか,代替品の引渡しをするかによって,契約目的を達成することができ,その場合には買主は解除ができなくなるのです。 ■いずれにしても,売主の追完権にかかわりなく,買主は,損害賠償請求権を保持しており,しかも,契約目的が達成できないときには,契約を解除する権利を有しているのですから,売主に追完権を認めたからといって,買主の権利が弱められることにはならないのです。