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27/29 民法561条と415条との関係

【テロップ】
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【ノート】
これまで,理解するのが困難とされている最高裁判所第一小法廷▲昭和41年9月8日判決▲民事判例集▲20巻7号1325頁を理論的に正当化するためには,「結果債務」と「手段の債務」とを峻別することが必要です。 一般法としての民法415条は,債務不履行責任を規定しています。 ここでは,損害賠償責任の原則である過失責任の原則が規定されています。 つぎに,民法560条以下には,特別法として,売主の担保責任が規定されています。 民法560条~564条は,タニン物売買について規定しています。 タニン物売買の場合,買主が善意,すなわち,売主が他人のモノを売ろうとしていることを買主が知らないときは,売買の原則どおり,売主は,財産権を移転するという結果を約束している「結果債務」だということになり,特別法としての民法560条以下の規定が適用されます。 これに対して,買主が悪意,すなわち,売主が他人のモノをうろうとしていることを,買主も知っている場合には,売主が他人の了承を得て,財産権を移転できるかどうか確実とは限らないことを買主は覚悟すべきです。したがって,この場合の債務は,手段の債務だということになります。 ■つまり,タニン物売買において,買主が悪意の場合には,手段の債務となるため,民法555条によって,財産権の移転という結果を約するという「結果債務」の規定としての売買の規定は適用されないのです。 その代わりに,手段の債務を含めた債務不履行の一般法である民法415条が適用されることになります。 ■したがって,債権者である買主が,売主のキセキ事由(すなわち,財産権移転のための最善の努力義務を売主が尽くさなかったという事実)を立証した場合には,買主は,民法561条の規定にもかかわらず,民法415条に基づいて,損害賠償を請求することができるのです。