11Joint&Several1
17/30 連帯債務者の一人について生じた不成立・取消し・無効の絶対的効力
【テロップ】
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【ノート】
連帯債務に関する相互保証理論は,優れた理論であり,通説の矛盾をすべて克服しています。 しかし,民法学において支配的な地位を保ってきた通説は,相互保証理論に対して,懐疑的です。 通説は,先に述べたように,矛盾だらけの破綻した学説なのですが,理由なしに100年以上にわたって通説の立場を保ってきたわけではありません。 ■通説は,連帯債務の法的性質について,債務複数説に立ちますが,先に述べたように,連帯債務の一人が連帯債務の全額を弁済すると連帯債務連帯が消滅することをうまく説明することができません。 ■連帯債務者の一人の全額弁済によって連帯債務全体が消滅するとすることをうまく説明できる債務一個説との戦いにおいて,債務多数説の立場に立つ通説が,頼りにしてきたのは,民法433条(連帯債務者の1人についての法律行為の無効等)でした。 ■債務一個説の場合,一人の連帯債務者に無効原因があれば,連帯債務全体が無効となるはずなので,「連帯債務者の1人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても,他の連帯債務者の債務は,その効力を妨げられない。」と規定する民法433条のおかげで,通説は,債務一個説に勝つことができたのです。■ しかし,民法433条は,通説のいうように,連帯債務の「別個独立性」を正当化する規定なのでしょうか? ■この問題については,後に述べるように,相互保証理論では,連帯債務者の一人に生じた取消し・無効原因は,確かに,連帯債務全体を無効にすることはないとしますので,この点では,通説の見解と同じです。 ■しかし,相互保証理論は,現行民法の立法者が参考にし,それを土台にした旧民法▲債権担保編▲第58条の規定と同様に,「債務におけるそのモノの部分につき,他の債務者を利す」と考えています。 ■すなわち,相互保証理論は,債務一個説とも,また,通説とも異なり,連帯債務者の一人に生じた取消し・無効の原因は,そのモノの負担分の消滅の範囲で,連帯債務の全額を減少させるため,他の連帯債務者に絶対的効力を生じさせると考えています。 ■このことは,相対的効力を原則とする民法440条に反するように見えます。 ■しかし,民法440条は,絶対的効力の例として,弁済,ダイブツ弁済を挙げておらず,旧民法に比較して,もともと不完全な条文なのです。■ 民法440条は,絶対体効力の例として,民法434条~439条だけを例外規定として,列挙していますが,それでは,不十分です。 ■民法440条は,例外に属するものとして,そのほかに,弁済,ダイブツ弁済,さらに,民法433条の連帯債務を生じさせた法律行為の取消し・無効原因も,絶対的効力を生じる理由として,列挙の中に入れるべきだったのです。■ このように考えると,民法433条は,連帯債務者の一人に生じた事由の相対的効力を規定しているのか,それとも,絶対的効力を規定しているのか? が疑問となります。 ■そこで,以下では,民法433条の立法理由を含めて,条文の成り立ちと,その意味を検討し,最後に図解によって,その本来の意味を解明します。 ■そのことを通じて,民法433条は,決して,通説の「別個・独立の」複数債務説を正当化できる条文ではないことを理解することができると思います。 ■民法433条の規定は,債務一個説に勝つには有用でしたが,相互保証理論に対しては,敗因となる規定なのです。