11Joint&Several1
20/30 相互保証理論は,一人についての取消・無効をいかに説明するのか? →立法理由,原理,免除との比較
【テロップ】
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【ノート】
通説が,連帯債務の別個独立性の根拠としている民法433条は,民法理由書によれば,実は,連帯債務の絶対的効力,すなわち,負担部分に対する連帯保証部分のフジュウ性を示す一例であることが明らかとなりました。 ■そのことを,わかりやすく図解することにしましょう。 ■最初の例と同じく,債権者▲Xから,Y1 ▲が,300万円▲,Y2 ▲が,200万円▲,Y3 ▲が,200万円▲をそれぞれ借りて,全員が連帯債務を負担したとします。■ Y3 ▲に取り消し原因(制限行為能力者の法律行為,詐欺又は強迫による法律行為)があり,Y3 ▲が,連帯債務契約を取り消して,債務が無効となったとします。■ ■この場合,連帯債務自体は無効とならないというのが,民法433条の意味ですが, ■連帯債務者の一人に生じた取消し又は無効は,他の連帯債務者に全く影響を及ぼさないのでしょうか? ■いっぺんに答えを出そうとすると誤りに陥ります。こういう場合には,一つ一つを分析的にものごとを考えるようにしましょう。 第2に,無効となったY3 ▲の連帯債務のうち,本来の債務,すなわち,負担部分が無効となった影響について考えてみましょう。■ ■これからが,連帯債務者の一人に生じた事由が他の連帯債務者にどのような影響を及ぼすかの問題です。 Y3 ▲の負担部分が無効となると,Y2 ▲がY3 ▲のために連帯保証していた100万円の部分が保証のフジュウ性によって消滅します。■ その結果として,Y2 ▲の連帯債務は,600万円から500万円に減額されます。 ■Y3 ▲の負担部分を連帯保証していた連帯保証部分がフジュウ性によって消滅したからです。 同様にして,Y1 ▲がY3 ▲のために連帯保証していた100万円の保証部分が保証のフジュウ性によって消滅します。■ その結果,Y1 ▲の連帯債務も,600万円から500万円に減額されます。 ■第2に,取消しによって,初めに遡って無効となったY3 ▲の負担部分以外の部分,すなわち,保証部分が消滅した影響について考えてみましょう。 保証部分が消滅しても,保証の消滅は,本来の債務に影響をおよぼさないため,他の連帯債務者には,なんらの影響を及ぼしません。 ■以上の分析によって,連帯債務者の一人に取消し又は無効原因が生じた場合に,他の連帯債務者に対してどのような影響が及ぶかという問題が解明されました。 第433条(連帯債務者の1人についての法律行為の無効等)を振り返っておきましょう。■ 連帯債務者の1人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても,他の連帯債務者の債務は,その効力を妨げられない。 ■結論は,以下のとおりです。 ■第1に,連帯債務者の一人に取り消しまたは無効の原因が生じたとしても,連帯債務全体が取り消されたり,無効になるわけではありません。 ■第2に,連帯債務者の一人に取消し又は無効が生じると,他の連帯債務者は,一人の連帯債務の負担部分が初めに遡って消滅することにより,その負担部分の範囲で,連帯債務の額が減額されるという,利益を受けます。 ■これが,連帯債務者の一人に生じた事由の絶対的効力といわれるものです。 ■確かに,民法440条によると,「第434条から前条〔第439条〕までに規定する場合を除き,連帯債務者の1人について生じた事由は,他の連帯債務者に対してその効力を生じない」と規定されており,第433条(連帯債務者の1人についての法律行為の無効等)は,例外としての絶対的効力に含まれていません。 ■しかし,絶対的効力として,民法440条の規定は,一番重要な債務の消滅原因としての弁済,ダイブツ弁済についても,例外として言及することを怠るという過誤を犯しており,もともと,不完全な規定なのです。 ■民法440条は,民法改正に際しては,フジュウ性を生じさせる,無効・取消し,及び,弁済・ダイブツ弁済を例外として追加すべきなのです。 ■今回の民法改正の法律案は,残念ながら,民法440条の改正に際して,絶対的効力をソウサイと更改に限定するという,連帯債務者,連帯保証人の保護に反する改正を目指しています。 ■弱者保護の観点から,今回の民法(債権関係)改正は,たとえ,実施されたとしても,近い将来,連帯保証人の保護の観点から,再改正を行う必要があると,私は考えています。