11Joint&Several1
21/30 相互保証理論に対する批判と反論

【テロップ】
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【ノート】
相互保証理論は,連帯債務の構造,その法的性質,連帯債務者の一人に生じた事由の他の連帯債務者に対する効力,負担部分を超えて弁済した連帯債務者に対する求償権の付与など,どの点についても,矛盾のない説明ができるにもかかわらず,通説の地位を得ることができないでいます。■ その理由は,支配的な学説が,相互保証理論を全く理解しないで,「よい点があるのは認めるが,条文の規定を説明できない点もある」などと,もっともらしい記述を教科書等で垂れ流しているからです。■ そこで,ここでは,通説の相互保証理論に対する批判が,全く的外れであり,批判になっていないことを明らかにします。■ その上で,2015年3月31日に国会に提出された民法(債権関係)改正法案においても,法制審議会の委員は,連帯債務に関する相互保証理論を全く理解しないまま,連帯債務者の保護の規定,すなわち,民法437条,および,民法439条を削除している点にも言及します。 ■今回の改正案においては,そればかりでなく,連帯債務者間の求償関係においても,免除や消滅時効によって債務を免れるべき連帯債務者の保護を行わないという方針を採用し,他の連帯債務者が,減額されないままの連帯債務を弁済した後は,免責されるべき連帯債務者に対して,弁済した連帯債務者からの求償を認めるなど,連帯債務者いじめに狂奔しています。 ■それでは,相互保証理論は,民法改正後においては,役に立たないのかというと,そうではありません。■ 民法改正によって生じる事態は,現行民法と比較した場合に,連帯債務者にとって過酷なものであり,民法(債権関係)改正の法律案が,保証人(連帯保証人を含む)の保護のためになされているという「嘘」を暴くためにも有用であり,改正法の今後の改正のための最も先鋭的な指針となると思われます。 ■民法(債権関係)改正,特に,民法437条,439条の削除,および,民法445条の改正は,今回の改正の目的である「保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備」とは,矛盾する改正であり,全面的な見直しが必要です。■ たとえ,改正がどのような方向に向かおうとも,連帯債務の法的性質と構造を明確にすることができ,連帯債務者の一人が全額弁済すると,その連帯債務者の負担部分の範囲で連帯債務の全額が減額され,弁済した連帯債務者は,他の連帯債務者の負担部分の範囲で求償権を有することを理論的に矛盾なく説明できるのは,相互保証理論しか存在しません。 ■したがって,今後においても,相互保証理論の価値が増すことはあっても,低下することはありえません。■ しかも,相互保証理論は,連帯債務に関する理論を明確に図示することができるため,連帯債務のあらゆる学説,あらゆる立法提案を的確に批判することができる点で,高い価値を保持していると,私は考えています。