11Joint&Several1
23/30 相互保証理論からの反論→通説による評価,原理
【テロップ】
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【ノート】
相互保証理論に対する代表的な批判として,平井説の批判を紹介しました。そして, それが,相互保証理論の無理解から生じているものであり,全くの的外れであることを論証しました。 ■ここでは,内田貴『民法Ⅲ』(2005)374頁をも取り上げて,相互保証理論に対する批判に反論することにします。 ■もちろん,このような相互保証理論に対する批判も,批判としては存在するので,定期試験問題において,その立場を明記した上で答案を作成した場合に,相互保証理論とは立場が違うからという理由で,減点の対象となることはありません。 ■資格試験を目指すヒトにとっては,むしろ,通説・判例で答案を作成する習慣をつけた方が,合格率がアップすることでしょう。 ■しかし,その場合でも,連帯債務に関しては,通説も判例も,修復しがたい矛盾に陥っており,そこから導かれる具体的な結論も,連帯保証人の保護の観点からは,妥当性を欠くことが多いという点については,常に,自覚しておく必要があると思います。 ■弱者保護の観点から教育研究を行うことを学則に規定している明治学院大学法学部で学ぶ者としては,めいぶんの規定に反して,連帯債務者を一方的に不利にする解釈は,たとえ,通説・判例であっても,批判を怠らないようにすべきだと,私は,考えています。 ■さて,本論に戻って,相互保証理論に対する批判に対して,反論を続けることにしましょう。■ ■さきに述べたように,平井説は,相互保証理論を理解した上での批判のように見えます。■ 内田説,すなわち,内田貴『民法Ⅲ』(2005)374頁も,平井説と同様,相互保証理論に対して,「この考え方は明快で理解しやすいが,請求の絶対効などはうまく説明できない」と述べています。■ しかし,平井説は,連帯債務にはフジュウ性が存在しないとしているのですから,平井説は,「連帯債務とは,本来の債務と連帯保証の結合であり,連帯債務者の一人の負担部分が消滅すると,他の連帯債務の保証部分もフジュウ性によって消滅する」という,相互保証理論の核心部分を理解せずに批判していることがわかります。■ 学生の中には,「東大教授がこんなに簡単に間違えるものでしょうか。何か理由があるのでは? 」という疑問を持つヒトがいます。 ■「東大の先生でもごまかすんだと知り,複雑な気持ちになりました」という感想を持つ学生もいます。 ■しかし,東大の先生でも,京大の先生でも,100年以上続いている,連帯債務を別個・独立の債務だと考え,保証と異なり,連帯債務にフジュウ性は存在しないと考える通説・判例の立場に立つ以上は,その矛盾からのがれることはできず,破綻を自白するか,破綻を取り繕ってごまかすか,いずれかの道しかないのです。 ■論理的に破綻した学説にしがみつき,矛盾のない相互保証理論に対して,根拠のない批判を繰り返す現在の学説の状況は,民法学の腐敗を示しており,通説・判例から導かれる結論が,連帯保証人の保護という全うな考え方に逆行するものである以上,これに反論を加えていくことは,明治学院大学法学部の使命であると,私は考えています。■ しかも,さきに詳しくのべたように,弁済の絶対的効力(更改,混同の絶対的効力も同じ)をきちんと説明できるのは,相互保証理論だけであることに,通説を主張する学者たちが,気づいていないことは, ■民法学の危機といってもよいように思われます。 ■なぜなら,このような通説・判例における連帯債務の本質に対する無理解が,2015年3月31日に国会に提出された「民法の一部を改正する法律案」に反映され,連帯債務者の一人が免除を受けたり,消滅時効を完成させたりした場合に,連帯債務者を保護する規定である民法437条,民法439条がともに削除されてしまうという暴挙がまかり通ろうとしているからです。 ■民法437条は,債権者が,一人の連帯債務者に対して,その債務を免除した場合に,その負担部分の範囲で,他の連帯債務者の利益のために絶対的効力(連帯債務額の減額)を生じさせるという,連帯債務者の保護の規定であり, ■民法439条は,連帯債務者の一人に消滅時効が完成したときは,その負担部分の範囲で,他の連帯債務者の利益のために,絶対的効力(連帯債務額の減額)を生じさせるという,連帯債務者の保護の規定です。 ■二つの規定は,ともに,連帯保証人でもある連帯債務者を保護するための規定であり,この規定を削除することは,今回の改正の理由に挙げられている「保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備」とは,実質的に矛盾する措置であり,撤回されるべきであり,もしも,改正がなされた場合には,直ちに再改正がなされるべきであると,私は考えています。