11Joint&Several1
26/30 連帯債務の一人に生じた事由の他の連帯債務者に対する絶対的効力→図

【テロップ】
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【ノート】
連帯債務者に対する相対的効力を規定している民法440条は,例外規定である絶対的効力を具体的に挙げているため,逆から言うと,例外的な絶対的効力を明示した条文となっています。 民法440条(相対的効力の原則)は,以下のように規定しています。■ 第434条から前条までに規定する場合〔履行の請求,更改,ソウサイ,免除,混同,消滅時効〕を除き,連帯債務者の一人について生じた事由は,他の連帯債務者に対してその効力を生じない。■ この規定は,さきに述べたように,旧民法▲債権担保編▲第57条を参考に起草されたと考えられますが,その第2項だけを取り込み,肝心の第1項,すなわち,連帯債務契約の不成立,債務の消滅原因のうち,取消・無効,そして,誰もが争わない,弁済・ダイブツ弁済を脱落させるに至っており,立法の不備といわざるをえません。 ■このような不備を補って,連帯債務者の一人に生じた事由が他の連帯債務者に影響を及ぼすという,絶対的効力をまとめてみましょう。■ 絶対的効力は,以下の三つにまとめることができます。■ 第1は,債権の不満足消滅です。この場合には,フジュウ性のみが生じます。 具体例としては,連帯債務者の一人の負担部分の不成立(取消・無効),および,消滅(免除,消滅時効)が挙げられます。 ■連帯債務者の一人に生じたこれらの不満足的消滅によって,他の連帯債務者の保証部分がフジュウ性によって消滅します。この場合には,求償の問題は生じません。 第2は,債権の満足消滅です。この場合には,フジュウ性だけでなく,求償が生じます。 具体例としては,連帯債務者の一人による,負担部分を超えた弁済,更改:ダイブツ弁済,ソウサイ,混同が挙げられます。 ■この場合には,フジュウ性による消滅の他に,求償権(通説によれば全部消滅)が生じます。■ 第3は,履行の請求(保証の規定の準用)です。■ 連帯債務者の一人に対する履行の請求が他の連帯債務者に対しても絶対的効力が生じるとする理由は,民法457条1項(主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は,保証人に対しても,その効力を生じる)が準用されるからです。 ■しかし,この効力は,請求を受けた負担部分に関してのみ生じるというのが,論理的です。 ■これに対して,現在の通説のように,それが,連帯債務の全額について絶対的効力を及ぼす規定だと解するならば,それは,行き過ぎとなります。 ■2015年3月31日に国会に提出された,民法の一部を改正する法律案によれば,この民法433条は,削除されることになっています。 ■しかし,行き過ぎた点を縮小すれば済むことであり,理論的な根拠となっている民法457条1項を改正しないまま,民法434条だけを削除したのでは,今後,解釈に混乱が生じることが予想されます。 ■この点から考えても,今回の民法(債権関係)の改正は,理論的考察をしないままに,破綻した通説・判例の見解に従って,行き当たりばったりの改正をしたものであることが明らかであり,今後の民法学の発展に対して,大きな障害となるように思われます。