11Joint&Several1
8/30 連帯債務の通説は理解が困難←図解,原理
【テロップ】
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【ノート】
連帯債務を理解しようとしても,通説の説明では,連帯債務の最も基本的な問題である,連帯債務者の一人が全額を弁済した場合に,連帯債務は消滅するのかどうか,論理的な説明ができません。 ■共通のセツレイを例にとって,検討してみましょう。 債権者▲Xから,Y1▲,Y2 ▲,Y3▲ が,それぞれ,300万円▲,200万円▲,100万円▲を借りて,Y1▲,Y2 ▲,Y3▲ が,それぞれ,全額600万円を連帯して債務を負担するという約束をしたとします。■ ■Y1▲が,600万円全額を債権者▲600万円を支払った場合,連帯債務は果たして消滅するのでしょうか。■ 連帯債務者の一人が全額弁済すると,連帯債務は消滅するが,連帯債務者間の内部関係として,不当利得に基づいて求償関係が生じるのでしょうか? ■そうではなく,連帯債務者の一人が全額弁済しても,連帯債務は消滅せず,全額弁済した連帯債務者が債権者に代わって,他の連帯債務者に対して求償するのでしょうか?■ それとも,通説とは異なり,債務は一つなのでしょうか? ■ もしも,連帯債務が一つの債務なのであれば,一人が全額を弁済すれば,連帯債務の全部が消滅することを説明できますが,それでは,連帯債務を多数当事者の債権・債務関係として捕らえている民法の基本的な立場と矛盾してしまいます。■ したがって,通説の言うとおりに,債務は複数と考えるべきなのです。しかし,そう考えると,今度は,債権者は,連帯債務全額の複数倍の権利を得ることになってしまい,そうでない理由を説明することができなくなります。■ ■また,連帯債務者の一人が,全額を弁済した場合に,別個・独立であるはずの,他の連帯債務が,なぜ,連動して消滅するのかをうまく説明できなくなります。 ■さらには,連帯債務者の一人が連帯債務の全額を弁済した場合に,自分の債務を弁済した者が,他の連帯債務者に対して,なぜ,求償を求めることができるのでしょうか?■ 通説によれば,求償は,連帯債務者間の内部関係に過ぎないとして,不当利得の問題として考えることになります。■ しかし,連帯債務者の一人の全額弁済によって,連帯債務が消滅すると考えると,求償権を確保するために用意された民法500条以下の弁済による代位の制度が使えないことになってしまいます。 ■なぜなら,民法500条以下の弁済による代位の制度は,債権者の債務者に対する債権が存在することを前提にして,その債権を弁済者に代位させるものだからです。■ そうすると,連帯債務を全額弁済しても,弁済による代位を利用できる範囲では,連帯債務は消滅しないことになりますが,それでは,「一人の給付があれば他の債務者も債務を免れる」という通説の考え方に矛盾が生じてしまいます。 ■つまり,「連帯債務とは,数人の債務者が,同一の給付について,各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担する,多数当事者の債務である」という通説の考え方では,「そのうちの一人の給付があれば他の債務者も債務を免れる」という結論を論理的に導くことができないのです。 ■このような破綻した理論を信奉してきたのが,現在の法律家の実態であり,わが国の民法学説の平均的なレベルでもあります。世界的に見れば,低い水準にとどまっているといってもよいでしょう。 ■連帯債務について,論理的な説明ができるヒトは,わが国では,ごく少数にとどまっているのです。 ■このような破綻した通説を理解していたのでは,民法の条文を理解することができないばかりか,連帯債務者の過酷な責任を緩和し,弱者保護をすることもできません。 ■弱者保護を目指すなら,矛盾に満ちた通説を突き抜けて,理論的にも一貫し,具体的な妥当性も確保でき,他の学説に対して,きちんとした批判をすることできる能力を養うことが大切です。 ■残念なことですが,連帯債務に関する通説を徹底的に批判する講義を展開しているのは,わが国では,明治学院大学と成城大学の二大学だけだと思います。 ■しかし,考えようによっては,他大学の学生との差をつける絶好のチャンスだと,ポジティブに捉え直すこともできます。 ■これを機会に,連帯債務に関するプロフェショナルとなり,自分のセールスポイントすることを考えてみるのもよいと思います。