11Joint&Several1
9/30 連帯債務に関する通説の矛盾

【テロップ】
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【ノート】
■連帯債務に関するわが国の通説が以下に矛盾に満ちており,克服すべき対象であるかについて,まとめることにいたします。 第1に,連帯債務の法的性質についてです。 ■通説によると,連帯債務とは,数個の独立の債務であるが,給付は一つであるとされています。 ■しかし,この文章は,実は,意味不明です。■ もしも,連帯債務が,数個の独立の債務なら,給付も複数倍になるはずだからです。 ■通説の連帯債務の性質の説明は,矛盾したごまかしの説明にすぎません。■ ■連帯債務の箇所で挫折する学生が続出するのは,わが国の多くの学生が,このような意味不明の文章を,意味もわからないまま,暗記して,わかった気になっているから,ちょっとした応用問題で挫折するのです。 第2に,保証との関係についてです。 ■通説によれば,連帯債務とは,独立の債務であり,保証債務とは異なり,フジュウ性は存在しないとしています。■ しかし,もしも,連帯債務のそれぞれが,別個・独立の債務なら,一人の債務者について生じた事由は,全体に波及しないはずです。 ■通説の考え方を素直に適用すると,連帯債務者の一人に生じた事由は,他の連帯債務者には影響を及ぼさない,すなわち,相対的効力にとどまるはずであり,一部弁済,ソウサイ,更改,免除等の絶対的効力を説明できません。■ 第3に,全額弁済の効果についてです。 ■通説の見解によると,連帯債務者の一人が,連帯債務の全額を弁済すると,連帯債務は消滅するが,連帯債務者間の求償関係は,不当利得の問題となるとしています。 ■すなわち,絶対的効力と内部の求償関係を厳しく区別しています。■ しかし,内部関係と言われている求償権については,民法442条以下にめいぶんの規定があり,しかも,民法500条の代位が生じる限りでは,債務は法定移転するだけで,決して消滅しません。 ■つまり,求償関係は,第1に,連帯債務者間の内部関係にとどまるものではありません。 ■なぜなら,全額弁済した連帯債務者は,民法442条以下に規定された求償権の範囲で,債権者に代位するのですから,代位した債権者と債務者という,内部関係を超えた関係が生じるのであって,連帯債務者間の内部問題として済ませることはできないのです。 ■第2に,連帯債務者の一人が全額弁済すると,通説は,連帯債務は消滅すると考えています。そして,全額弁済した連帯債務者が他の連帯債務者に対して,不当利得に基づいて求償することができると考えています。 ■しかし,これも誤りです。不当利得は,法律上の原因がない場合にのみ発生するのであって,民法442条以下に,求償権が生じるという法律上の原因がある以上,不当利得の問題は生じないからです。 ■しかも,全額弁済した連帯債務者が民法442条以下に基づいて,他の連帯債務者に求償権を行使する場合には,民法500条以下の代位が発生し,連帯債務の全額を弁済した連帯債務者は,「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当しますから,民法501条に規定されているように,「自己の権利に基づいて求償することができる範囲内において,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」のです。 ■したがって,連帯債務者の一人が連帯債務を全額弁済しても,債権者の連帯債務者に対する債権は,決して,すべてが消滅することはなく,債権者に代わって,全額弁済した連帯債務者が,債権者に代位して,他の連帯債務者に対して,その債権を行使して,求償権を確保することができるのです。 ■以上の点をまとめてみることにしましょう。 ■連帯債務に関する通説の見解は,第1に,法的性質に関して,連帯債務は,数個・「独立」の債務であるという点で誤っています。 ■第2に,連帯債務は,固有の債務だから,フジュウ性は生じないという点でも,連帯債務者の一人に生じた事由が他の連帯債務者に対して生じる絶対的効力が生じること,例えば,連帯債務者の一人が弁済したり,ソウサイしたり,更改したりすると,他の連帯債務者は,その範囲で,債権者から請求をうけることがなくなることを説明できない点で,誤っています。 ■第3に,連帯債務者の一人が,連帯債務の全額を弁済すると,連帯債務はすべて消滅すると考えている点においても,誤っています。求償を確保する範囲で消滅しないからです。 ■このようにして,連帯債務に関する最も基本的な問題について,通説が,これほど大きな誤りを犯しています。 ■これほど,多くの誤りに陥り,論理的に矛盾に満ちた学説が,民法制定以来,変わることなく,通説・判例の見解として,正しいと信じられてきたのは,なぜなのでしょうか? ■これこそが,現在のわが国の民法学説および判例が陥っている,最大の問題点なのです。 ■そこには,論理の欠如と権威主義という根深い腐敗の温床が隠されています。 ■すなわち,わが国の民法学説においては,外国の学説を信じてわが国の民法の条文を平気で無視する学風が今なお存在しており,学者の恩師に対する過度の従順さ,東大・京大の教授に対する他の学者の追随とあいまって,学問における腐敗が進行しているように思われます。 ■そこで,この講義では,通説・判例に盲従することなく,連帯債務者の一人が全額弁済をしても,連帯債務は完全には消滅しない。すなわち,負担部分を超えて全額弁済した連帯債務者の求償権を確保するために,民法500条以下の代位(債権の消滅ではなく,法定移転)が生じるのであって,連帯債務は,負担部分を超えて弁済した範囲では消滅せず,連帯債務がすべて消滅するのは,他の債権者が求償に応じて,その弁済を完了した後のことであることを明らかにしていきたいと思います。 ■しかも,このような絶対的効力は,弁済だけでなく,ソウサイ,更改,混同の場合にも生じることを,めいぶんの規定に反することなく,しかも,論理的に誤りが生じないように説明することにします。 ■めいぶんの規定に反せず,論理的に民法の体系を構築すること,そして,それに反する学説,判例に対しては,権威を恐れずに批判をし続けることが,民法学に生じている腐敗を改善する唯一の方法だと,私は,考えています。