12Joint&Several2
12/33 連帯債務の一部・全額弁済と“Do for others”

【テロップ】
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【ノート】
連帯債務の弁済について,負担部分の範囲内の弁済と,負担部分を超える弁済とについて,明治学院大学のケンガクの精神である“Do for others”とを対比しながら,連帯債務の一部弁済・全部弁済の意味をより深く理解してみることにしましょう。■ 負担部分の範囲内の弁済は,自己のための弁済であり,“Do for others”ではありません。 ■したがって,連帯債務者の一人が,自己の負担部分の範囲内で弁済をしても,他の連帯債務者に対して求償権は生じません。これが,相互保証理論による民法442条1項の解釈です。 ■もっとも,連帯債務者の一人が,自己の債務を弁済すると,そのことによって,自動的に,すなわち,フジュウ性によって,他の連帯債務者も利益を受けます。つまり,個人が単独で債務を負っている場合とは異なり,集団において,連帯して債務を負担している場合には,個人がその固有の義務を果たすことが,全体の利益にもなるのです。これが,集団におけるWin Win の関係です。そのことを詳しく見ていくことにしましょう。■ 負担部分の弁済は,自己の債務の弁済なので,確かに,自分のための行為であって,他人のための行為ではありません。■ しかし,負担部分の弁済は,単に,自分の債務を消滅させるだけではなく, 他方で,フジュウ性によって他の連帯債務者の保証部分を消滅させ,他の連帯債務者の利益を増します。これが,連帯債務の一人に生じた事由が他の連帯債務者に影響が及ぶという絶対的効力の典型例です。 ■このように,負担部分の弁済の効力は,絶対的効力が生じるだけにとどまり,負担部分を弁済したに過ぎない連帯債務者は,他の連帯債務者に対して求償権を取得することはできません。■ これに対して,負担部分を超えて弁済したときは,負担部分を超えた部分の弁済は,以下に述べるように,保証人としての弁済に該当するため,求償権が生じ,弁済による代位を通じて,連帯関係が解消されます。■ 負担部分を超えた部分は,保証人としての弁済であり,「共同の免責を得る」という,「他人のための弁済」(すなわち,”Do for others”)です。■ 負担部分を超えて弁済が行われた場合には,一方で,負担部分を超えて弁済をした連帯債務者には,他の連帯債務者に対する求償権が発生します。 ■ただし,他人のための弁済によって求償権を取得するためには,“Do for others”のすべてに通じることですが,他人のために,情報提供義務を尽くさなければなりません。 ■つぎに,詳しく論じますが,負担部分を超えて弁済する場合には,民法443条1項に規定されているように,二重弁済のおそれが生じないかどうか? または,他の連帯債務者の中に,債権者に対して,抗弁を有するモノがいないかどうか? を知るために,他の連帯債務者に対して,事前の通知をする必要があるのです。そして,その後に,負担部分を超えて弁済した場合には,求償権を確保する範囲で,債務は消滅することなく,民法500条以下の「弁済による代位」が発生するのです。 ■さらに,連帯債務を弁済した場合には,他の連帯債務者が二重に弁済することがないように,事後の通知をすることも必要です。この義務は,他の連帯債務者のための安全配慮義務の一種と考えられます。 負担部分を超える弁済をした場合には,他方で,負担部分を超えた弁済の範囲において,連帯債務は消滅せず,弁済による代位が生じ,債権者▲Xに代わって,Y1 ▲が,Y2 ▲,Y3 ▲に対して債権を行使することになります。 ■ただし,債権者▲Xが,Y2 ▲,Y3 ▲に対して請求する場合には,それぞれに対して,300万円の連帯債務の弁済を請求することができるのですが,Y1 ▲が,債権者▲Xに代わって請求する場合には,Y1 ▲は,求償権の範囲でしか,債権者▲Xに代位できないので,Y2 ▲には,200万円,Y3 ▲には,100万円しか請求できないので,その点では,その他の連帯債務者の負担が軽減されます。