12Joint&Several2
13/33 連帯債務のまとめ連帯債務の基礎理論としての「相互保証」理論

【テロップ】
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【ノート】
これまで,連帯債務について,冒頭条文と現在の通説を検討し,連帯債務に関する通説・判例は,それぞれの連帯債務が別個・独立に存在していると考えるため,論理的に破綻していること,これに対して,相互保証理論によれば,連帯債務の構造と本質が明快となり,連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者にどのような影響を及ぼすかについても,論理一貫した説明が可能であることを学んできました。 ■ここで,連帯債務の相互保証理論と通説とを対比しながら,連帯債務のまとめをしておくことにします。■ 相互保証理論によれば,連帯債務とは,複数の本来の債務を前提として,それを相互に連帯保証し合う関係のことであり,個々の連帯債務については,本来の債務(すなわち,負担部分)と連帯保証(すなわち,保証部分)とが結合したものであると定義することができます。 これに対して,通説は,連帯債務とは,別個・独立の複数の債務が存在するものであると考えています。 そして,通説によれば,連帯債務は,保証ではなく,本来の債務だから,連帯債務にはフジュウ性という性質は存在しないと考えています。 ■しかし,通説のように考えると,セツレイの場合,すなわち,3人の債務者▲Y1 ▲,Y2 ▲,Y3 ▲が,債権者▲Xから,それぞれ,300万円,200万円,100万円を借りることにして,債権者Xに対して,連帯して債務を負うとの契約を締結したというセツレイの場合,Y1 ▲も,Y2 ▲も,Y3 ▲も,別個・独立に600万円の連帯債務を負うということになります。 ■もしも,本当に,連帯債務が,連帯保証を含まない,別個・独立の債務だということになると,債権者は,600万円の3倍の1,800万円の債権を有することになりますが,通説・判例も,そのような結論は是認しません。しかし,これが通説・判例の論理の破綻の始まりです。 ■なぜなら,債権者▲Xが,1,800万円の債権を取得しないということは,Y1 ▲,Y2 ▲,Y3 ▲のそれぞれの600万円の連帯債務が,実は,別個・独立の関係にはないことを意味しているからです。 ■連帯債務が,別個・独立の債務でないことは,通説・判例が,連帯債務者の一人が,連帯債務の全額である600万円を債権者に弁済すると,他の連帯債務者は,連帯債務を免れることを認めていることからも明らかです。 ■もしも,Y1 ▲,Y2 ▲,Y3 ▲のそれぞれの600万円の連帯債務が,別個・独立の連帯債務だとすれば,たとえ,Y1 ▲が,600万円を弁済したとしても,それは,連帯債務者の一人に生じた事由にすぎず,他の連帯債務者であるY2 ▲,Y3 ▲は,依然として,それぞれ,600万円の連帯債務を負うことになるはずだからです。 ■連帯債務者の一人に生じた事由は,他の連帯債務者に影響を及ぼさないことを原則とする通説の考え方によると,連帯債務者の一人に生じた事由が,他の連帯債務者に生じる例外的な事由,すなわち,絶対的効力事由とは,民法440条に規定されているように,民法434条から439条までに規定する場合,すなわち,(1)履行の請求,(2)更改,(3)ソウサイ,(4)免除,(5) 混同,(6)消滅時効の完成の六つの事由に限定されるはずです。 通説は,連帯債務者の一人に生じた事由の絶対的効力は,政策的考慮に基づくものであり,請求の絶対効を除いて,債権者に不利であり,制限的に解釈すべきであると考えています。 ■民法440条が規定する六つの絶対的効力事由には,弁済・ダイブツ弁済は含まれていないのですから,絶対的効力事由を制限的に解釈するという通説・判例の考え方に従って,民法440条を忠実に適用すれば,連帯債務者の一人が別個・独立の連帯債務である600万円を弁済したとしても,それは,他の連帯債務者に影響を及ぼすことはなく,他の連帯債務者は,依然として,別個・独立の600万円の連帯債務を負担すると考えなければならないはずなのです。 ■しかし,通説・判例は,連帯債務者のうちの「一人の給付があれば他の債務者も債務を免れる」としているのですから,別個・独立の連帯債務のうちの一人に生じた事由である,600万円の弁済に過ぎない事由が,すべての連帯債務者の債務を免れさせるというのであれば,それは,矛盾であり,通説は,ここに至って,完全に破綻します。 ■連帯債務とは,「数人の債務者が,同一の給付について,各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担し,しかもそのうちの一人の給付があれば他の債務者も債務を免れる多数当事者の債務である」という通説の論理が完全に破綻していることが判明したとして,それに代わる相互保証理論は,以上の点について,論理一貫した説明ができるのでしょうか?■ ■相互保証理論によれば,本来の債務は,負担部分である,300万円+200万円+100万円イコール600万円に限定されるので,債権者▲Xが取得する債権の合計額は,1,800万円ではなく,600万円であることを破綻なく説明できます。 ■しかも,連帯債務は,負担部分と保証部分の結合だと考えるので,Y1 ▲,Y2 ▲,Y3 ▲のそれぞれが負担する600万円の連帯債務の内容を,明らかにすることができます。 ■Y1 ▲は,300万円の債務を負うほかに,Y2 ▲のために200万円の連帯保証をしており,Y3 ▲のために100万円の連帯保証をしており,それが,Y1 ▲の600万円の連帯債務の内容となります。 ■Y2 ▲は,200万円の債務を負うほかに,Y1 ▲のために300万円の連帯保証をしており,Y3 ▲のために100万円の連帯保証をしており,それが,Y2 ▲の600万円の連帯債務の内容となります。 ■Y3 ▲は,100万円の債務を負うほかに,Y1 ▲のために300万円の連帯保証をしており,Y2 ▲のために200万円の連帯保証をしており,それが,Y3 ▲の600万円の連帯債務の内容となります。 ■相互保証理論は,このようにして,各連帯債務者の連帯債務の内容を,質においても,量においても,明確に表現できるため,連帯債務者の一人に生じた事由が,他の連帯債務者にどのような影響を与えるかについても,以下のように,明確に説明することができます。 (5) 第1に,連帯債務者の一人の負担部分が消滅した場合には,他の連帯債務者の連帯保証部分が,民法448条に基づいて,すなわち,フジュウ性によって,消滅します。これが,絶対的効力が生じる理論的な根拠です。 ■これに対して,通説は,さきに述べたように,連帯債務は,債務であって,保証ではないので,連帯債務の場合には,フジュウ性は生じないとするため,債権の相対性から派生する相対的効力は説明できますが,それに反する絶対的効力がなぜ生じるのか説明できません。 ■そのため,通説は,絶対的効力は,理論の問題ではなく,法政策的考慮に基づく例外的措置であり,請求の絶対効を除いて,債権者を害するために,民法440条に規定されている例外的な事由に限定されると考えているのです。■ しかし,相互保証理論によれば,民法440条に規定されていない,連帯債務者の一人による連帯債務の弁済・ダイブツ弁済,連帯債務者の一人についての法律行為の無効等(民法433条)についても,絶対的効力を生じることばかりでなく,民法440条に例外として規定されている民法434条から439条までの事由による絶対的効力は,決して,単なる政策的考慮による特別の措置の問題ではなく,負担部分の消滅によるフジュウ性の効果であり,理論的な問題として,明確に説明することができます。 ■この点が,相互保証理論が,通説よりも,理論として優れている,第1のポイントです。■ 第2に,連帯債務者の一人が負担部分を超えて弁済・ソウサイ,更改等を行った場合についても,相互保証理論によれば,負担部分の範囲内でフジュウ性による絶対的効力が生じるにとどまらず,負担部分を超えた弁済等,他の連帯債務者に代わって共同の免責を得る行為(すなわち,”Do for others”)をした場合には,弁済等をした連帯債務者は,他の連帯債務者に対して,求償権を取得します(民法442条)。 ■そして,この求償権を確保するために,その範囲で連帯債務は消滅することなく,弁済等を行った連帯債務者は,他の連帯債務者に対して,債権者に代位して,求償権の範囲で,債権を行使することができるのです。 ■連帯債務者の一人が,負担部分を超えて全額弁済をした場合に,通説は,連帯債務は全部消滅し,内部関係として,別個に求償関係が生じると考えています。 ■しかし,相互保証理論によれば,連帯債務者の一人であるY1▲が,300万円の負担部分を超えて,連帯債務の全額600万円を弁済した場合には,まず,負担部分の弁済によるフジュウ性によって,連帯債務の総額が300万円に減少します。 ■これに対して,負担部分を超えた300万円の弁済は,保証人としての弁済であるため,Y1▲の他の連帯債務者に対する求償権を確保するために,債権は完全には消滅せず,Y1▲は,債権者に代わって,Y2▲に対して200万円,Y3▲に対して100万円の請求をすることができます。 ■連帯債務が完全に消滅するのは,Y2▲とY3▲が,Y1▲の求償に応じて,それらの額をすべて弁済したときです。 ■負担部分を超えた弁済をした場合には,求償権の範囲で,債権は消滅せず,完全な消滅が生じるのは,求償が完了した時点であるとする点は,相互保証理論が,通説よりも理論的に優れている,第2のポイントです。