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17/33 連帯債務の応用例(浮気紛争)(2/3)図解→事実関係,最高裁,基本原理,基本設例

【テロップ】
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【ノート】
浮気をした夫の責任を免除しつつ,浮気相手だけに,連帯責任としての損害賠償額全額を請求することは許されるかどうかが争われた最高裁判所第一小法廷平成6年11月24日判決(判例時報1514号82頁)の事案の図解です。 ■夫▲Y1 と妻▲Xとの間の婚姻関係は,夫▲Y1▲が,▲Y2と不貞行為を行ったことによって,その婚姻関係が破綻したため,民法719条に基づき,夫▲Y1▲と,浮気相手▲Y2▲とが連帯して,妻▲Xに対して,連帯して300万円の損害賠償責任を負うことになります。 その後,妻▲Xが,夫▲Y1▲だけに対して,連帯債務の免除を行ったとします。■ 免除の意図は,妻Xは,夫▲Y1▲は許しても,浮気相手▲Y2▲は許さないということです。■ 夫▲Y1▲の連帯債務が全額免除されると,第一段階として,負担部分である150万円の消滅によるフジュウ性の効果,すなわち,絶対的効力が生じます。■ 夫▲Y1▲の負担部分が消滅することによって,浮気相手▲Y2▲の夫▲Y1▲のための保証部分が消滅し,連帯債務額は,300万円から150万円へと減額されます。■ ■もっとも,通説・判例の見解によると,不真正連帯債務の免除は,絶対的効力が生じないため,浮気相手▲Y2▲は,依然として,300万円全額の損害賠償責任を負うことになります。 ■確かに,連帯債務の免除ではなく,夫▲Y1▲に対する不訴求免除とか,連帯だけの免除の場合には,このことが正当化されますが,本来の意味での連帯免除の場合には,他の連帯債務者の保証部分を消滅させるのが,理にかなっていると思われます。 浮気相手▲Y2▲が,通説・判例を批判するとすれば,その言い分は,「浮気当事者には,双方ともに,主観的共同関連性があります。民法719条が,連帯と規定しているのに,なぜ,不真正連帯なのでしょうか? 連帯債務と考えても,結果も妥当ではないでしょうか? 妻を裏切った夫▲Y1▲には,債務不履行責任があるとしても,すでに婚姻関係が破綻しているからこそ,▲Y1▲は,私を求め続けたのであって,そのヒトを愛した私に,なんの咎があるのでしょうか?」ということになるのでしょう。 ■もしも,民法719条を,通常の連帯債務であり,妻▲Xが,夫の連帯債務を完全に免除したのであれば, それに連動して, 浮気相手▲Y2▲の連帯債務は,300万円から150万円へと減少するはずです。 ■これに対して,通説・判例は,民法719条の文言を無視して,共同不法行為は,連帯責任ではなく,不真正連帯債務であって,不真正連帯債務者の一人に生じた事由は,弁済・ダイブツ弁済以外には,他の不真正連帯債務者に対して影響を及ぼさないと考えています。 ■そこで,民法719条について,条文の文言を無視して,不真正連帯債務の立場をとることを明確にした,平成6年の最高裁判所の判決を詳しく,かつ,批判的に検討することにしましょう。