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18/33 連帯債務の応用例(浮気紛争)(3/3)最一判平6・11・24判時1514号82頁→図解,批判,基本設例

【テロップ】
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【ノート】
最高裁判所第一小法廷平成6年11月24日判決(判例時報1514号82頁)は,以下の通りです。■ 民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は,いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから,その損害賠償債務については連帯債務に関する同法437条の規定は適用されないものと解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)▲第431号▲同48年2月16日第二小法廷判決・ミン集27巻1号99頁参照)。 この考え方に対しては,不真正連帯債務は,債務者間に主観的共同関係がない場合に生じるはずであるとの批判が妥当します。■ つまり,不貞行為の当事者間には主観的共同関係が存在しており,真正の連帯責任が生じるはずなのです。 ■この点で,この判決は,主観的共同関係があるかないかを基準として,連帯債務と不真正連帯債務とを区別してきた学説との間に齟齬が生じており,条文の文言を無視する理由としては不十分といわなければなりません。 ■実は,不真正連帯債務とは何かについて,通説は,統一した見解を有していません。 ■もっというならば,不真正連帯債務とは,歴史的には,負担部分を観念できず,本当に,別個・独立の債務であり,一人が全額を支払っても,求償も生じない債務のことをいいます。 ■ところが,最高裁は,競合不法行為者カンにおいても,求償が生じることを認めているのですから,最高裁が,共同不法行為者の責任を不真正連帯債務だと考えることは,実は,矛盾に陥っているのです。 ■それにもかかわらず,最高裁は,共同不法行為者の責任は,不真正連帯債務であって,共同不法行為者の一人に生じた事由は,他の共同不法行為者に影響を及ぼさないと考え,以下のように述べています。■ Xは,本件調停において,本件不法行為に基づく損害賠償債務のうちAの債務のみを免除したにすぎず,Yに対する関係では,後日その全額の賠償を請求する意思であったものというべきであり,本件調停による債務の免除は,Yに対してその債務を免除する意思を含むものではないから,Yに対する関係では何らの効力を有しないものというべきである。■ ←しかし,この考え方は,絶対的効力の本質,すなわち,連帯債務のフジュウ性を知らないために陥る考え方であり,しかも,当事者の意思は,第三者に影響を及ぼすことはないという,契約の相対効という基礎理論を無視した議論であって,完全な誤りです。■ ←たとえ,XがYに対して債務を免除する際に,第三者に影響を及ぼすという意思があっても,その意思自体は,債権の相対効によって第三者には影響を与えないはずであり,絶対的効力を当事者の意思で説明しようとしても,それは無駄な議論にすぎません。■ ←免除の絶対的効力が生じるのは,フジュウ性という客観的な事由に基づいていることに気づくべきでしょう。