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28/33 求償の要件としての事前・事後の通知最二判昭57・12・17(5/7)
【テロップ】
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【ノート】
最高裁昭和57年12月17日判決を図示してみましょう。■ XとYとが,訴外A▲建設会社に対し連帯して,損失補償金(5,600万円)の支払を約し,その負担割合をほぼ平等(2,800万円)としていたところ, Xが,事前・事後の通知をせずに,上記補償金の全額をダイブツ弁済しました。■ 全額を弁済したXが,Yに対して求償を求めたところ,XがYに事後の通知をしなかったために,一部弁済をしたことを理由に,Yは,求償に応じませんでした。 ■なぜかというと,Xの事後の通知がなかったため,その後,Yも,上記補償金の一部を弁済しており,二重弁済の状態となっており,事後の通知を怠ったXの求償に応じることはできないと考えていたからです。■ この点について,最高裁は,「相手方が1項の事前の通知を怠っているので,2項は適用するまでもなく,先になした弁済が有効となり,求償は制限されない。」と判断しました。 しかし,Xが事後の通知を怠ったために,負担部分の範囲で二重弁済をしたYにとって,酷にすぎるようにも思われますが,Yも,一部弁済をするに先立ち,Xに事前の通知をすることを怠っていましたから,何らかの制裁を受けるとしても,仕方がないのでしょうか?■ 最高裁は,「Yは,1項の事前の弁済を怠っているので弁済は無効である」として,事前・事後の通知を怠ったにもかかわらず,民法443条2項の適用を否定してXの請求を認め,民法443条第1項のみを適用して,事前の通知を怠ったYの抗弁を退けました。 ■しかし,最高裁の判断は,以下の二つの点で,問題があります。 ■第1は,民法が1項と2項とに分かれている場合に,1項が適用されたら,2項は適用されないという法則は存在しないにもかかわらず,最高裁は,民法443条1項のみを適用して,民法443条2項の適用を否定しています。 しかし,本件において,Yの二重弁済という不幸な事態を生じさせるに至る最初の原因を作ったのは,Xです。 ■Xは,全額弁済して,共同の免責を得たにもかかわらず,事後の通知を怠ったために,そのことを知らないYが二重に弁済したのであって,この場合には,まず,民法443条2項によって判断する必要があります。■ 民法443条2項の適用をしないとした最高裁の判断には,根拠が欠けています。 ■第2に,最高裁は,最初に支払ったXの弁済が,のちに支払ったYの弁済に優先すると考えています。 ■しかし,連帯債務者が求償するには,二重弁済等の不都合を未然に防止するために,事前・事後の通知を義務づけ,これを怠ると,求償が制限されるというのが,民法443条の立法趣旨です。 ■二重弁済を防止するために,故意または過失のある連帯債務者の求償を制限する規定があるのにもかかわらず,それを無視して,故意または過失のある連帯債務者であっても,さきに弁済すれば,それが優先するとした最高裁昭和57年判決は,民法443条の立法趣旨を踏みにじるものではないでしょうか?