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29/33 求償の要件としての事前・事後の通知最二判昭57・12・17(6/7)判例批判

【テロップ】
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【ノート】
最高裁昭和57年判決を図示することによって,最高裁判決の問題点が浮かび上がってきました。 そこで,最高裁▲昭和57年判決の問題点をまとめてみることにしましょう。■ 第1点は,最高裁判決は,負担部分を超える弁済か否かの判断に脱漏があります。 本件の場合,Xの弁済は,負担部分を超える全額弁済なのですから,求償権を生じさせるために,Xには,事前の通知と事後の通知義務が課せられています。 これに対して,Yの弁済は,負担部分の範囲内の弁済であり,求償権を生じさせないのですから,Yの弁済には,事前の通知義務は課せられていません。 ■最高裁は,この点を完全に無視しており,適用すべき民法443条2項を適用し,適用すべきでない民法443条1項を適用しており,最高裁が最も重視すべき厳格な法の適用について,致命的な誤りに陥っています。 ■最高裁の誤りは,これにとどまりません。 最高裁判決は,以下に述べるように,義務違反があるかどうかについての判断にも脱漏があります。 Xの弁済は「負担部分を超える」弁済であり,求償権を生じる行為であるにもかかわらず,事前の通知も,事後の通知も怠っています。 ■本件の場合,Xが「事後の通知」を怠らなければ,二重弁済は生じないのですから,民法443条2項によって,Xの求償権は,制限されるべきです。 これに対して,Yの弁済は,「負担部分の範囲内」の弁済であり,求償権を生じないので,「事前の通知」は必要がありません。したがって,Yには,義務違反はなく,Yの弁済は有効であり,したがって,Xは,Yの弁済の効力を否定できないと考えるべきです。 ■最高裁▲昭和57年判決は,過失のある弁済者の求償を認め,過失のない弁済者の抗弁を認めないという重大な誤りを犯しており,この判決は,今後の判決に影響を与えるべき判例としての価値を全く有していないと,私は考えています。