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30/33 求償の要件としての事前・事後の通知最二判昭57・12・17(7/7)図解→まとめ

【テロップ】
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【ノート】
昭和57年12月17日の最高裁判決に対して,連帯債務の一部弁済について,わが国で,唯一,整合的な理論を提供している相互保証理論の立場に立って,徹底的に批判しました。 ■しかし,批判だけでは建設的ではありません。 ■そこで,相互保証理論に基づく,論理一貫した結論を図示してみることにしましょう。■ XとYとが,訴外A▲建設会社に対し連帯して,損失補償金(5,600万円)の支払を約し,その負担割合をほぼ平等(2,800万円)としていたところ, Xが,事前・事後の通知をせずに,その補償金の全額をダイブツ弁済しました。■ Xの連帯債務の全額弁済によって,まず,負担部分が消滅し,フジュウ性によって,Yの連帯保証部分が消滅します。この段階までは,求償が生じないので,ひとまず,求償の要件としての事前・事後の通知の問題はスルーしておきます。■ 全額弁済をした連帯債務者Xは,他の連帯債務者に対して,事後の通知をしなければならないのですが,Xがこれを怠ったため,善意のYは,自己の負担部分の範囲内である1,000万円を支払います。債権者も,うっかり,これを受け取ってしまい,二重弁済となってしまいました。■ しかし,Yの弁済は,負担部分の範囲内の弁済であり,主たる債務者の弁済に該当するため,事前の通知は必要ではありません。 ■Yは,事後の通知はしているので,Yには,全く過失がないのです。■ 二重弁済が生じたのは,ひとえに,Xの過失,すなわち,XがYに対する事前・事後の通知を怠ったことに起因するのであり,負担部分の範囲内で弁済をしたYには,なんらの過失もありません。 したがって,民法443条2項が適用され,Xは,求償を制限されます。 ■Xの求償がいくら制限されるかというと,Yが適法に負担部分を弁済し,フジュウ性によってYの保証部分が消滅するため,求償の範囲も1,000万円の範囲で制限されるのです。 求償が制限された分は,Xが,二重弁済を受けた,債権者である訴外▲A▲から,不当利得に基づいて返還を受けることになります。 ■このように考えると,Xの過失によって生じた二重弁済について,最高裁判決は,過失のないYに対して,訴外▲A▲に対する取り戻しを負担させるという不当な結果を生じさせました。 ■しかし,相互保証理論によると,二重弁済について,民法443条の立法の趣旨に従って,過失のあるXにその負担をおわせるという,合理的な解決を導くことができました。 ■このように考えると,相互保証理論を身につけると,最高裁のように,適用すべき法令を適用せず,適用すべきでない法令を適用するという,法令の適用に関する致命的な誤りに陥ることもなく, ■過失のあるモノを不当に免責し,過失のないモノに不当な負担を押し付けるという危険からも免れることができます。 ■これまで,通説・判例が,連帯債務に関して,初めから終わりまで,誤りに陥っていることを見てきました。 ■明治学院大学の学生のみなさんは,連帯債務の構造と本質とを▲”Do for others”の観点から,再検討し,通説・判例とは異なり,基本的な誤りを避けつつ,連帯債務者の保護を実現するように努力してみてください。