12Joint&Several2
4/33 一部免除の絶対的効力法律家の弱点としての定量分析
【テロップ】
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【ノート】
法律家は,一般的にいって,「過失があるのか,無過失なのか」とか,「因果関係があるのか,ないのか」などの定性分析には強いのですが,「どの程度の因果関係があるのか」とか,「寄与率はどの程度なのか」という引き算や割り算をともなう定量分析には弱いという弱点をもっています。 ■債権者が連帯債務者の一人に対して連帯債務の全額を免除した場合にどのような効果が生じるかについては,説はわかれるものの,法律家は優れた見解を示します。しかし,連帯債務の一部を免除した場合には,大混乱に陥ります。 たとえば,連帯債務者の一人が債権者から連帯債務の半額の免除を受けた場合に,他の連帯債務者にどのような影響が及ぶのかについては,学説は混乱しています。■ たとえば,柚木説は,連帯債務の免除については,債務の免除に着目して,負担部分から優先的に免除を進めるという立場をとっています。■ これに対して,債権者を保護することに熱心なワガツマ説は,連帯債務の免除については,連帯の免除に着目して,保証部分から優先的に免除をするという立場をとっています■ 判例の見解は,これらとは異なり,連帯債務の免除とは,債務だけの免除とも,連帯だけの免除とも異なるのであるから,負担部分と保証部分とを比例的に免除するものだと考えて,比例配分によって一部免除を行うという立場をとっています。■ ■一部というのは,引き算か,割り算・分数をともなう思考方法ですので,一般論として,法律家は苦手なのです。 ■連帯債務の一部免除を正確に理解できる学者は,ごく少数です。 ■この講義では,一部免除のつぎに,一部弁済を取り上げますが,そこでは,一部免除よりも,さらに悲惨な結果が,通説と判例に共通して現れており,通説も判例も,大混乱に陥っています。 ■法学部の学生も,一般論として,比例配分とか,確率論とかは,苦手です。 ■しかし,リスク管理が重要視される現代社会において,按分比例とか確率論を無視することはできません。 ■これから,この講義で取り上げる一部免除,一部弁済の問題について,理解を深め,定性分析だけでなく,定量分析もできるヒトへとレベルを上げていくことにしましょう。