12Joint&Several2
8/33 一部免除の絶対的効力(4/4)応用問題

【テロップ】
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【ノート】
連帯債務の一部免除の問題は,連帯債務者の一人に生じた事由が,他の連帯債務者にどのような影響を与えるのかを考えるのに,最も適した事例です。  ■なぜなら,連帯債務の免除について,連帯債務の負担部分の免除(すなわち,債務の免除)と連帯債務の保証部分の免除(すなわち,連帯の免除)とをしっかりと区別する能力を身につけてくれるからです。 ■そこで,最後に,一部免除のなかでも,最も難しいとされる問題に挑戦してみることにしましょう。 ■共通のセツレイにおいて,債権者▲Xが,Y1 ▲ではなく,Y2 ▲に対して,連帯債務の半額を免除した場合に,他の連帯債務者であるY1 ▲,および,Y3 ▲に対して,どのような影響を及ぼすかを考えてみましょう。 画面には,判例の見解による解決方法を示しますので, ■第1に,Y1 ▲,および,Y3 ▲の連帯債務が500万円に減少するのはなぜなのか,じっくりと検討してみてください。 ■そのあとで,第2に,債権者▲Xが,Y2▲に対して連帯債務の免除をした場合,柚木説に立った場合には,どのような結果が生じるのか?を考えてみてください。 ■さらに,そのあとで,第3に,債権者▲Xが,Y2▲に対して連帯債務の免除をした場合,ワガツマ説に立った場合には,どのような結果が生じるのか?を考えてみてください。 ■ワガツマ説の検討は,現在においては,非常に重要な意味を持ちます。 ■なぜなら,2015年3月31日に国会に提出された民法(債権関係)改正は,連帯債務者の一人に対する連帯債務の免除について,大審院以来の判例の見解を否定し,ワガツマ説よりもさらに極端な,連帯の免除説に立つことを明らかにしているからです。 ■民法改正案は,民法437条を削除した上で,▲以下のような条文を新設して,連帯債務の免除は,連帯の免除と同じ結果を生じることにしています。 ■連帯債務の免除なのに,それを連帯の免除と同じであると考えることになるのですから,今回の立法者の見識を疑わざるを得ません。 ■(改正法案)第445条■(連帯債務者の一人との間の免除等と求償権)は,以下のように規定しています。 ■連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ,又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても,他の連帯債務者は,その一人の連帯債務者に対し,第442条第1項の求償権を行使することができる。 ■債権者がみずから望んで,連帯債務者の一人を免除しても,他の連帯債務者には,その利益を生じさせないというのですから,債権者保護を極端にまで進めており,その反対に,連帯債務者いじめが極端にまで至っていることがわかります。 ■今回の民法(債権関係)改正は,以上のように,債権者の保護に偏っているかと思うと,以下の改正第453条のように,債権者の権利を不当に害する規定を設けるなど,バランスが取れていない改正案が多すぎると,私は考えています。 ■(改正法案)第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)は,以下のように規定しているからです。 ■債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,債権者は,前二条の規定による契約の解除をすることができない。 ■この規定が,なぜ,債権者いじめになっているかというと,契約の解除とは,そもそも,契約目的が達成できなくなった場合に,債務者の帰責事由がある場合でも,債務者の帰責事由がない場合でも,無意味となった契約の拘束から契約当事者を解放するためのものです。 ■今回の民法改正によって,契約目的が達成できない場合には,債務者に帰責事由がない場合でも,契約の解除が認められたのに,債権者に帰責事由がある場合には,いくら契約目的が達成できなくなり,当事者を契約に拘束する利益がなくなったとしても,契約解除を認めないというのですから,改正法案第543条は,債権者いじめの規定に他ならないと,私は考えています。